クライキズナ ―― 土星から来た猫 †
姉さんはいつも微笑んでいた。
五年前に両親の離婚で離ればなれになっていたが僕を引き取った母が麻薬中毒で錯乱し自殺したことがきっかけで僕は姉さんの自宅で暮らすこととなった。
姉さんの家は郊外の平屋の一戸建てで庭には家庭菜園が広がっていた。僕が初めて姉さんの家で食べた食事は野菜がメインだった。僕が渋って食べないでいると姉さんは自慢の野菜だからといやがる僕に勧めた。嫌々僕が食べるとそれはとても甘かった。ジャンクフードになれていた僕はそれにとても驚いた。
日長菜園の世話ばかりしている姉さんの野菜はそこそこ有名らしい。毎日のように野菜を何かと交換していた。姉さんにしてもそこはこだわりがあるようでいろいろと育て方を試していた。一日の水の量、回数の調節から日陰の位置など様々に。
いつも優しく微笑んでいた姉さんの女性に僕が反応するようになるのにそう長い時間はかからなかった。その日はいつも通り寝室で寝入った姉さんを僕は一晩中視姦していた。
そんなひも長くは続かずとうとう僕は姉さんを襲った。そんなときまで姉さんは笑っていた。笑って僕を受け入れた。僕は姉さんの中ですぐ果てた。何度も何度も果てた。その後の記憶ははっきりしていない。ただ朝方に見た姉さんの寝顔はいつもと変わらなかったのが印象的だった。その笑顔に僕は後悔の念を抱いた。
それからというもの僕は毎日姉さんを抱いていた。僕は貪るように姉さんの身体を求めていた。これは後で気づいたことだが、僕の知れない五年間で何かがあったのか姉さんに善悪の判断というものが欠落していた。近親相姦なんて言葉、あのときの姉さんは頭の何処にも無かったに違いない。言うなれば極端な中立主義だった。姉さんは何にも属さず、何にも見ようとせず、全てを容認していた。僕はそんな姉さんが狂おしいほどに愛し、同時に恐れていた。
恐れていたそれは突然に、しかし予想通りに起こった。
それは僕を壊してしまうには十分だった。
姉さんは妊娠した。