KIT Literature Club Official Website

京都工芸繊維大学 文藝部

Top / 失はれる物語
Last-modified: 2016-07-15 (金) 09:57:27 (2814d)
| | | |

ブックレビュー

失はれる物語 (角川文庫)

  • 作者: 乙一
  • 評者: 峰々碧
  • 日付: 2016-07-14

お薦め対象

基本ハッピーエンド派だけど、少し変化球が欲しい人

感想

 短篇集で全7作収録されています。うーん、何と言っても文章が読みやすいです。リズムが心地よくて、言葉も無駄に難しくない。難しい言葉を使わなくても、こんな文章書けるんだって全然語彙のない私はちょっと嬉しくなりました。でも、多分そうじゃなくて、作者の方は語彙はあるけど選んで使ってるんだけなんですよね……えー、話が逸れました。短編集なのでもちろん作品によって雰囲気が変わってくるのですが、「切ない」ってこういうことなんだろうなあって感じは一貫しているような気がします。
 人と人の運命が交差するときって、やっぱり輝くのでしょうか。この本にはその一瞬が描かれているような気がするんです。でも、一度交差した直線ってもう一度交わることないんですよね。これが切ないって言うのでしょうか。心に残して前に進むけど、ちょっと寂しい。
 一人で海岸線に座って、風に吹かれていたいような気分になった時、「手を握る泥棒の物語」「しあわせは子猫のかたち」をお勧めします。