ブックレビュー 西崎憲『世界の果ての庭』 † 評者: 篠瀬櫂 日付: 2016-11-26 感想 † 「ショート・ストーリーズ」の副題の通り、全部で五十五に断片化された、いくつかの筋が並走し交錯する。例えば英国の庭について、若返ってゆく母親について、江戸に現れる怪物について、そして駅が階層をなす空間について……。 いくつもの世界はどこかで繋がっているようで、それでいて尻尾を掴ませない。逃げ水を追うように読者はページをめくる。こんな読書体験はちょっと他にはない。