Handle with care. ―― 海砂利水魚 †
紅葉する木々とは反対に秋の日差しは鋭い。
雲のない空から降り注いで、葉一枚容易に貫いて届く。
体が透けていくのも当然のこと。
左手なぞもう落ち葉さえすり抜けてしまうほど其処にはない。
思えば私はいつも笑っていた。
時には真顔になったり怒っているふうな顔もしたが笑顔に対しては喩えそれたどんな類のモノであれそれで返していた。
けれどそれがいけなかったとは思っていない。
いや、そう思いきれていないからこそ。
それでも私は当人たちを前にするときれいさっぱり忘れてしまったように、いつもの笑顔で振る舞うのだろう。
これはもう一種のアイデンティティーだと思ってあきらめることにする。
けれど、このただ唯りの当の本人対しては一言だけ付け加えておくことにした。
私は、あるいは白地にクローバー柄の薄焼きのティーカップなのかもしれないと、
(了)