レイン~雨の日に生まれた戦士~ †
- 作者: 吉野 匠(著)
- 評者: f
- 日付: 2016-08-14
私にとって †
六月某日。虫垂炎により入院することになった私は突然与えられた時間に狂喜しつつ、久しぶりに『レイン~雨の日に生まれた戦士~』の読み残していた新刊を手に取った。初めて出会ったのは小学生の頃だったから、かれこれ八年ほどの付き合いがある作品だ。
内容は異世界を舞台とした、剣と魔法のファンタジー。主人公は過去に悲しみを抱えた最強戦士で、なぜか女性にモテまくる(無自覚)というライトノベルの鉄板設定である。
しかし作品を初めて知った頃の私はそれまでライトノベルに触れたことがなかったこともあり、新鮮な驚きをもってこの作品を受け入れた。それ以来、レインは私にとって最も大切な作品であり続けている。
月日が流れ、読んだ作品数がそれなりに増えた今ではこの作品が特異なものだとは思わなくなった。発行元のアルファポリスから出ている作品もここ数年で大幅に増えており、レインは書店の棚で以前より存在感を減じているような気がしてならない。実際、最新刊のあとがきで作者自身も「気付いたら似たキャラクターも増えていた」と語っており、私は少し切ないような気分にさせられたのである。
そのような理由もあって最近なんとなく疎遠になっていたのだが、久しぶりに読んだ感想は、好きなものはやはり好き、だった。良くできた作品を読んだときとは少し違うかもしれないが、懐かしいキャラクターに触れるといいようもない興奮(平たく言うと萌え)が体内に満ちるような感覚に襲われた。
大好きな気持ちは思うよりも強い。これはお互い見守り続けるような関係にある、私にとって大切な作品なのである。