*恋猫水溶液* †
鮎川つくる*作*
さくら満開ガーリーという語をはき違え
山眠る思い通りのお洒落して
プリキュアの目にハイライト竜田姫
「マッチョ苦手」砂日傘の鮮やかに
春めくやおなかをぽんぽんと言う余裕
dickとかいう外国語四月馬鹿
秋の蛇おまえも悩むのかと言われ
さんずいとにすいのかわり目九月尽
すももには恥をかかされたから嫌い
ぺらぺらの千円札や万聖節
*
アマリリス占星術では癒やされぬ
雨月の街にインターネット的空想
風薫る沁みるガガーリンの名言
秋声や「眼鏡は生理的に無理」あーあ
黍嵐「いいね」の逆は「よくないね」
紙魚ちゃんにかじっちゃヤーよとこびてみる
(血の成分)=(恋猫水溶液)
ふくろふやジブリが好きとは言えなさそう
「とろろ汁あんまり得意じゃ無いの」いまさら
舞台女優はほんとに泣いていた霞
さくら蕊降る高齢化社会へと
「※フィクションです」に安心・慢心いわし雲
良夜なりかわいい名前「けむぴこ君」
釣瓶落とし何がスローフードだよ
鳥帰る暴走族にも帰る家
「~として」生まれたる世の残暑かな
寒暁のチリンが軽くてつらい
JSの方言美しや日の盛
ぼくの『メイドインアビス』手汗でくたくた
寒暁はプラスチックは飛び散った
*
豊年やなんでも漏らすのは快感
名月や突然強く腹下す
冷房か下痢かはざまの九月尽
*
「一説によると……」寄り目に西日が当たってた
秋の虹の方へアルバイトへ向かふ
ゆで卵つるりと剥けて秋惜しむ
大理石のなかのアンモナイト涼し
数式のxに居座る西日かな
畳くずいっぱい部室は寒い寒い
西日ですパラボラアンテナ一つ
「ええそうです」電話の指の先は春
冷奴食うてる猫背が痛そうで
*
店長は東京出身文化の日
占い師が欲しい二〇二〇年秋
秋風鈴天気予報は外れたの
休暇明け太字混じりの自己顕示
宵祭予言二三を耳打ちす
あーいま多佳子忌だったと空を見る
露の世やゆるーい「名湯ゆ~トピア」
造幣局はmintというらし冬うらら
「神に愛される」ことは死ぬことやまざくら
ああ涼しアンモナイトは強そうで
君付けで呼ばれるアイドル四月馬鹿
*
冷まじやフルネームでは呼ばないで
酔芙蓉グレてもきっとお嬢様
くらげ拾ふ結婚線は見えません
朝寒にうまく行かない四捨五入
初冬や分母と分子の仲違い
*
袋角触れればふぐりほどの熱
薔薇垣に体言止めのひびきあり
仏前に男女は無くて遍路かな
遠雷がへそから入り抜けにけり
じゃんけんのグーで負けたる涼しさよ
台風がえがく軌跡のくびれかな
セーターを脱ぎしかたちの個性かな