TRASH!
生活廃棄物研究会。ある1人のストーカー行為(意中の女性のゴミあさり)から始まったこの研究会は、今ではその(異常に)熱心な活動を認められ、近隣の住民達にゴミサークルと呼ばれ親しまれていた。
そんなゴミサークルに今年、新しく研究員が入会した。それが大のゴミフェチ、この物語の主人公でもある風間タクミ(18)である。
ゴミ収集日の朝。今日もゴミサークルのゴミ研究もといゴミあさりが始まる……
ゴミ研究は、近隣の民家のゴミ袋を一つ一つチェックして、きちんと分別されているか、危険物が混入されていないかなどを調べるといった活動だ。表向きには。
「う~ん、このなんとも形容しがたいニオイ、たまんないっす」
恍惚の表情でゴミのニオイを嗅ぐタクミ。今日もゴミ研究に余念がない。
「くはぁ、アヤさん、昨日の夕食はボンゴレだったんですねぇ。あ、銀座カク○ル。アヤさんこれスキだなぁ。僕も好きだけどv」
鼻の下をのばしてゴミを漁る研究会会長・山本シゲル(21)。ゴミサークルはこの人物の野望によって強制設立された。
「先輩、それ位にしないとマジでとっつかまりますよ」
「お前に言われたくねぇよ!」
ヴォローン…
「ムッ。来たか」
「今日もバッティングしましたね」
重厚な唸り声を上げながら車が近づいてくる。ゴミ収集車だ。
ヴォロロロロ…
度々ゴミの前で止まっては、回収員が手際よくゴミを車に放り投げてゆく。
「今日もアイツらか…カラスよりタチ悪いな」
ゴリラのように毛深く屈強そうな回収員が呟く。
「よく飽きませんよね」
ツリ目で細身の回収員が言う。
回収車がゴミサークルの2人の前に止まり、一層唸り声を上げる。
ヴォォォォォォオーーン…
「今日も来やがったな。ここで会ったが百年目、人の恋路を邪魔するような奴は、この三節棍でブチのめしてやるぜ!!」
リュックから素早く三節棍を出して構えるシゲル。
「援護します!!先輩!!」
「そんなモンで勝てると思ってんのか?サトウキビより甘いな」
回収車から降り、ファイティングポーズをして構えるゴリラ回収車。
「もぅ…血の気が多いんですから…僕はゴミ回収してますよ?」
ツリ目がテキパキと仕事をはじめる。
「ホワチョゥ!!」
三節棍が唸りながら打撃を与えようとゴリラ回収員に向かってゆく。しかしゴリラ回収員はファイティングポーズのまますべてをよけ、間を見切ってジャブを繰り出す。が、シゲルも動きを見切り、避けながら技を間髪入れずに繰り出す。そのとなりでテキパキとゴミを回収するツリ目回収員。そしてタクミはシゲルの獲物のゴミをリュックに詰めてゆく。
「先輩、完了しましたよー」
「きいちゃいねぇ~」
十分後…
ボグォッ……ドォ……
2人がアスファルトの上に倒れる。
「ハァ、ハァ…お前、強いな…」
シゲルが拳を額にやりながら呟いた。「ハァ…お前もな…」
お互いの顔を見合わせ、汗だくで微笑み合う。
「いつまでも青春マンガやってないで仕事してください、先輩」
涼しい目で見ていたツリ目が言う。
「先輩…カッコ良かったです…!!」
デジカメを片手に感動しているタクミ。
ゴリラ回収員が立ち上がり、収集車につかまる。
「また闘ろうぜ」
爽やか過ぎる笑顔で言う。
「おう」
上半身だけ起こし、腕をのばし親指を立ててGOODのジェスチャーをするシゲル。敵同士であった事はもはや忘却の彼方のようだ。
運転手が吸っていたタバコの火を消し、収集車を発車させる。
ヴォロロ…
遠ざかってゆく回収車。
「終わったな…」
「今日は活動終了ですね。先輩!今日の戦利品です!」
タクミがバカッとリュックを開く。
「おおおおおおおおぉぉぉッッ」
住宅街に響く雄叫び。
「こ、ここここここ、コレは……ッッ!!パン●●ではないかッッ!!ンハーーッッ、でかしたタクミ~ッッ!!!」
黒いパン●●を手に、三節棍を振り回しながら唸るシゲル。
今日も晴天である。