バトル・ロワイアル †
- 出演: 藤原竜也, 前田亜季, 山本太郎, 栗山千明, 柴咲コウ
- 監督: 深作欣二
- 評者: 哉
- 日付: 2006-07-30
お薦め対象 †
出演者に興味があるかたへ。
あらすじ †
大人の自信を取り戻すため可決された新世紀教育改革法「BR法」それは、全国の中学3年生から選ばれた1クラスの生徒たちを無人島に集め、最後のひとりになるまで殺し合いをさせる残酷なサバイバルゲームだった。
ある日突然、42人の生徒に強制される殺し合い。歯向かえば容赦なく消され、おびえ怒りながらも与えられた武器を手に、自分たちの命をかけた殺戮(さつりく)ゲームの幕を切る。初めて味わう死と隣り合わせの極限状態で、夢、希望、願い、友情…さまざまな自分の思いと向き合いながら武器を抱えて走る彼らの姿に、凝縮された青春像が垣間見れる。
感想 †
あまりに過激な設定のためにR-15指定がついてしまった作品。
しかし、それが逆効果となり必要以上に注目を集め、
同じクラスの中学生が殺しあうというという過激な内容から、
少年少女たちの好奇心に火をつけてしまった問題作であります。
つまるところ、これはそういう一種の怖いもの観たさという人間の心理を、
何やかんややっているうちに見事についてしまって成功した映画です。
周りの話を聞くとですね、なかなか評判がよろしかったわけで。
でも、その頃は映画を観ようという気にはなれず、とりあえず小説を先に読んだわけです。
先に書いておきます。「バトル・ロワイアル」は小説の方が格段におもしろいです。
設定から読み取れるように、これは、普段は友達付き合いをしている中学生が、
唐突にサバイバルの中に放り込まれるという、異常すぎる事態に戸惑いながらも、
自分が生き残るために友を殺すもの、そんな状況から逃げ出すために自ら死を選ぶもの、
クラスメイトを信じて散っていくもの、ふざけた事を考えた政府に抗おうとするもの、
そういった十人十色の感情が絡まりあう力作です。
そう、力作なんです。小説では、ひとりひとりのエピソードに力強さがあり、
追い詰められた環境に置かれたときの人間の脆さや儚さが書き上げられています。
つまり、丁寧なんです。まあ、ないがしろにされている生徒もいることはいますが。
人間誰しも心というものがあり、人生という時間を刻んできているということが書かれています。
だから、これを二時間ぐらいの映画にまとめるのは、
全員のエピソードを撮るということは不可能だということを理解してください。
映画では、クラスメイトの二人、桐山と川田がそれぞれ転校生としてBRに参加します。
そうした方が映画の尺を短くするのに都合がいいのです。
なぜなら、彼らには殺し合いを否定する理由がないから。
そもそも、これがいただけません。こんなことをしては、同じ教室で同じ事を学んできた中学生が、
お互いを信じられずに裏切ったり裏切られたり、
自分の運命に立ち向かっていく様が薄らいでしまっています。
よくわからない殺人鬼が襲ってくるなんて設定を盛り込んだ瞬間に、
この作品が築き上げるはずの雰囲気や登場人物の気持ちといったものが、
ちんけなものになってしまっているのです。
結果として、売り上げだけ見ればこれは成功していますが、
小説を先に読んだものとしては、少々消化不良な作品でした。悪くはないんだろうけどさ。