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京都工芸繊維大学 文藝部

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Last-modified: 2007-04-10 (火) 23:00:46 (6224d)
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死霊のはらわた

  • 出演: エレン・サンドワイズ, ベッツィ・ベイカー, ハル・デルリッチ, サラ・ヨーク
  • 監督: サム・ライミ
  • 評者:
  • 日付: 2006-07-29

お薦め対象

極上の恐怖をあなたに。

あらすじ

 アッシュたち5人の若者は、休日を郊外で過ごそうと、山奥にある貸別荘へとやってくる。そこで、彼らはテープ・レコーダーを発見し、テープを再生する。そのテープには死霊を解き放つ呪文が録音されていた。次々と死霊にとりつかれていくアッシュの仲間。倒すには、怪物の体をバラバラにするしかない……。

感想

 もうね、怖い!です。

 次々に悪霊に取り憑かれる友人が、醜い姿へと変貌して、まだまともな主人公たちを襲ってきます。霧に囲まれた山奥のコテージという閉鎖空間で、自分たちの身を守るために元仲間を殺していきます。銃で頭を打ち抜いても死なない。首が千切れても動いている。唯一、四肢をもぐことでその動きを止めることができる。

 ちょっと吹き出すくらい血の気が多いので、そういうのが苦手な方には勧めませんが、ホラー映画というものの価値観が変わることうけあいです。

 この怖さというものは、どこから来るのかと考えたときに、まず独特のカメラワークが挙げられると思います。コテージの中、悪霊に怯える主人公の視点であったり、またはボッコボコに殴られている悪霊だったりと、とにかく重要なシークエンスや、この時代では技術的にも難しいシークエンスにおいて、うまく観客の想像力をかりたてるような工夫がなされています。

 実は、この映画を見るまでは、ホラーというジャンルをあなどっていました。それはたぶん、昔の大人がアニメなんて下らないと蔑んでいた感じに似ています。カートゥーンアニメーションの荒唐無稽さを笑い、奥行きがないと批判する。いまだにコメディ映画がアカデミー賞を取れないように、ホラーというジャンルを軽く見ていました。

 かといって、この作品は多様な人間ドラマを描いているわけではありません。ましてや悪霊に取り憑かれた人間の描写などはチープすぎますし、上にも書きましたが、過剰な演出でおかしさも兼ね備えています。完全にB級映画です。

 でも一級品です。とても面白くて、とても怖い。

 これ以上、この映画に必要なものはないと断言できます。それほどまでに完成されており、いまでもなおホラー映画の金字塔として輝き続けるのだと思います。どんなに映像技術が進化しようと、どんなに観客の目が肥えようとも、わたしたちはこの映画の功績を認めざるをえないでしょう。

 巨額の制作費=名作なんて公式は当てになりませんともさ。
 是非、真夏の恐怖映画リストに「死霊のはらわた」を入れてくださいな。

評価:A



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