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京都工芸繊維大学 文藝部

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Last-modified: 2008-04-04 (金) 00:20:59 (6106d)
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スーパーコンピューターを20万円で創る (集英社新書 395G)

  • 作者: 伊藤 智義
  • 評者: 季柚下 沙葉
  • 日付: 2008-03-31

お薦め対象

モチベーションを上げたい人

内容

重力計算専用の計算機を制作するプロジェクトGRAPEの黎明期を綴った回想録。

感想

 本書は東大杉本研究室で重力計算用の専用ハードGRAPE-1の制作過程、背景を綴ったものである。筆者伊藤智義は与えられたテーマではあるものの電子回路、論理設計の知識0からはじめてGRAPE-1の設計、制作のほぼ全てを単独で行った。GRAPE-1に関しては配線終了後からいきなり動作までしたというから驚きである(あの空中配線で)。

 先日読んだ加藤周一の『羊の歌』などもそうだが、いかに自分が凡人かを思い知らされる内容であった。ただ、杉本や牧野が至った結論は自然な流れであるように思えるし、伊藤のしたことも始めから回路の知識があれば済む話だ。すごいのはプロジェクト進行の異様な速さだ。伊藤においては一筋の理念が貫けるほどの計画力、実行力がものを言った。抜群の明瞭さを持ちながらも愚直にさえ思える。とにかくまっすぐだ。全体としては「各自の役割が自然と分かれていった」。「本当のチームワークとは何か? それはきっと馴れ合いでもなければ助け合いでもない」との言が心証に残る。

 縦書きということで想像出来ようが本書を読む上で計算機の知識はいささかも必要ない。回想録ではあるが特に伊藤の立場で書かれてはおらず、ドキュメンタリー形式が取られている。漫画原作を業としていただけあって文章表現は抜群に上手い。すばらしいドラマが楽しめると思う。