世界は密室でできている。 †
- 作者: 舞城 王太郎
- 評者: 哉
- 日付: 2006-08-02
お薦め対象 †
兎に角、走り出したいんだ!というかたへ
あらすじ †
「何とかと煙は高いところが好きと人は言うようだし父も母もルンババも僕に向かってそう言うのでどうやら僕は煙であるようだった。」―煙になれなかった「涼ちゃん」が死んで二年。十五歳になった「僕」と十四歳の名探偵「ルンババ」が行く東京への修学旅行は僕たちの“世界と密室”をめぐる冒険の始まりだった
感想 †
相変わらず不条理に進んでいくストーリーに、普通なら辟易するはずなのにのめりこんでしまう。そんな不思議な魅力をもつ作家、舞城 王太郎。
この人の書くミステリは、もう本格も新本格もトンデモミステリをも超越しているように感じます。清涼院流水あたりがメタミステリを自称していますが、彼の書く作品は人間味がすこし欠けていていまいち。まあ、舞城氏の場合も似たようなものであるはずなのに。
ありえない人物像に、ありえない展開。なのにこちらを納得といいますか説得といますか、半ば強引に物語の中に引き込んでいく。
修学旅行中、都庁の前でファイトしているカップルを止めに入り、女性のほうに伸されてしまい、介抱してやると埼玉に拉致られる。そして帰りに彼女の妹の運転する車に乗っているところ、唇を奪われる。
ホントにどうかしているとしか思えないようなストーリーラインなのに、気がつくとページをめくる手が止まらなくなります。もうミステリなんて付属品に過ぎません。はなから読者に謎解きなど要求していことは明白です。こんなの、小学生に量子力学のテストを受けろと言っているようなものです。
「先生、そんなの教わっていません!」
「わかりました、これが答えです」
だから、答えだけ言われたってどうしようもないでしょ。と思うのですが、意外にこれが気持ちが良かったり。
エンタテイメントとしてはかなり面白いです。いえ、この作品の真価は青春エンタテイメントです。それにしても、このスピード感には嫉妬を禁じえませんともさ。