開始行: [[活動/霧雨]] **主義大戦 [#wf639df8] 狐砂走 錆びた黄金の器の中にはオレンジ色のスープがあり、クッキ... 百台程のモニターには世界中の「混乱」が映し出されていた... 天井に届くほど巨大なホワイトボードには十二人の顔写真が... 政府の役人が大慌てにモニターで監視しながら調べ事をして... ---------------------------------------------------------... 「ふわぁ......眠い」 ペンギンやクマ、ウサギ、アザラシ、シロイルカ等が布と綿... (私だって好きでこんな風に脅威となった訳じゃないのに......) 文原愛狸。二十一歳の恋愛至上主義者。全ては恋愛を第一優... 「全ては愛の為に。愛は全ての為に」 別にこの掛け軸は彼女が書いたものではなく、彼女がここに... 彼女は毛布の中に入っていた目覚まし時計を見て寝ようとし... 「ねーむれー、ねーむれ。ねーむれ、ねーむれ」 外から大音量で流れていた。女の子の声で子守唄のように歌... ...... 聞けば聞くほど後頭部に鉄パイプでも殴られたような眩暈と... 彼女が目を開けた瞬間、理解の追い付かない環境が待ってい... 壁や天井はビスケットのように砕け、辺りの空気を赤く染め... 「これで終わりだよ。文原さん。人々が築き上げてきた平穏や... 部屋の惨状がある事実を示していた。 彼女と笑顔の男以外の九人の「現人神」は全員抹殺されてい... (この男が全員を倒したっていうの? いや、有り得ない。ま... 私は腰のポケットから彼に悟られないようにアサルトライフ... 恋愛において片想いは一方通行であり、相手には中々気づい... 「おや? 私を撃とうとしているのですね。しかし残念ながら... 彼は私のすぐ後ろにいた。さっきまで目の前にいたはずなの... (......っ!) 本当に気付かなかった為、私の右手で掴んでいた銃が一瞬滑... 私の胸には壁や床についた紅い血が映った刃が刺さっていた... 「これで強者はいなくなりましたね。大丈夫です。あなたた... 薄れゆく意識の中で私は考えた。この俊敏さはとてもじゃな... 「お前は化け物だ」 私は後ろの彼に言い放った。 「......」 彼は少し黙ると、 「そうですね、私は化け物です。人間の中でより人間性のある... 「ねぇ、『恋愛は死なない』って知っている?」 彼の顔の表情がこわばった。人の理屈では説明が付かない事... 「絶対に許さないから」 私は彼に心臓が燃え上がり、その火が吹き出しそうな濁った... ---------------------------------------------------------- ロンドン塔にて ロンドン塔刑務所所長に一本の電話がかかった。 「私だ。そっちは終わったのか?」 所長は後ろの窓を目で確認したと思うと、所長室のドアに顔... 「......一本のメッセージが入りました。『ええ、はい。もう... 通話は「あちら」の仕事が終わった事の知らせだった。サイ... (彼は約束してくれた。権威と金を望み通りよこしてくれると... 所長は席を立つと部屋を出て地下へ向かった。 「所長、護送準備が整いました! ヴェンゲールは特別独房に... 「うむ、私も立ち会おう。もしかすると命乞いでもしてくれる... 「はい。対敵弾発射機部隊百名、戦車部隊五十名十台、機関銃... 「そうか」 職員はまるであの怪物が脱獄するなんてあり得ないと言うか... 「少し用を足しに行ってくる。くれぐれも警戒を怠らないよう... 「はい!」 所長はトイレに入ると洗面台の鏡に顔を向けた。 (私ならできる! 今までこの刑務所はあらゆる凶悪犯罪者を... 所長は自分の手を見て初めて分かった。こんなにも自分の手... (なぜ私が緊張しているのだ! 実際に護送してくれるのは職... 所長はトイレから戻ると、 「護送を開始する」 「はっ! 扉開錠!」 職員の一言により、銀行の金庫のような自分の三倍もある円... 「へー、今回は所長自身が俺の前に立つなんてどんな良い事が... 扉の向こうからもう聞く事はないと思っていた男の声が聞こ... 「今日は君の最後の日だ。何か言い残す事はないかね?」 「その態度を見るからに、今日が俺の処刑の日という訳か。... 所長にとってこの男の笑い声は聞きたくなかった。聞くたび... 「そういえば、この俺を送り付けた人達はどうした?」 「......?」 「ほら、あのヤバい十一人。噂くらい聞いてるだろ?現人神」 「どうせのんきにやっているだろ? 全く...」 ------------------------------------------------- ヴェンゲールは所長の顔つきを睨みつけた。 (あぁ、そういうこと。これは相当面白そうだなぁ) 俺は数秒目を瞑った後、妙に手が汗ばんでいる所長とその他... 「おい、お前ら。そんな装備で俺を出迎えてくれるのは嬉しい... 職員や特殊部隊は互いの顔を見合わせながら、顔を横に振っ... (あっ、やっぱり) 「こんな様子じゃ、誰も知らないってか? はぁ、ろくに俺の... 所長の目は大きく開き、息が荒くなっていた。 「お前に何ができるというのだ! 今ここにいる部隊はこの刑... 所長の頭には「冷静」という単語はもはや無かった。 (さっき、俺を閉じ込めたやつの所在を聞いたとき、知らない... 「うるせぇなぁ......久しぶりに運動してみるか」 俺は口を大きく開けると、すぐに閉じた。 ---------------------------- (どうしよう...初めてこの刑務所の職員になって何だかおっか... 僕はまだロンドン塔の職員になってまだ三か月間しか働いて... (あの金髪男、口を大きく開けて一体どうするつもりだろう?) 金髪男が口を勢いよく閉じた瞬間、職員の一人が悲鳴を上げ... 「ぎゃああああああぁぁぁぁ!」 思わず一体何があったのかと声のする方に目を向けてみた。... いや、噴き出すなんて当たり前だった。なぜなら右腕がミン... 所長は悲鳴が上がった瞬間、両肩が素早く上がって、声にも... 「一体何があった!」 所長が周りの職員に強く問いただすと、 「いきなりこの職員の真下から白い『斬撃』のようなものが出... 「そんな馬鹿な事があるか!ヤツは指一つも動かせない拘束状... 僕は金髪男の方へ目を向けた。すると、彼の拘束具は完全に... 「はぁ...あの胡散臭いオヤジに当たらなかったか...まぁ、ず... 僕は彼の口元を見て気付いた。 (あの人、歯で舌を切ったんだ! ) 彼が勢いよく口を閉じた時、舌を噛み切った。この行為をト... 僕は一瞬瞬きしてもう一回彼の口に注目した。すると、彼の... いよいよ訳が分からない。自分を傷つけたら攻撃が相手に降... 「やっぱり、出力方向言わないと駄目か......」 所長の顔は汗がだらだらと流れ、口が半開きのまま震えてい... 「君達! さっさと捕まえんか!」 所長は確かにそう言った。一、二、三、四、五、六、七、八... 所長の命令から十秒経ったが誰も動かなかった。特殊部隊は... 「おい、どうしたぁ? いつでもいいぜ? あのオヤジの言う... 誰も言い返せなかった。銃と盾をただ構えているだけだった。 「お前らの心境を当ててやろう...... 一つは迎撃態勢って言... 彼がそう言うと、銃と盾を構えなおすように僅かに体を動か... 「そして三つは...圧倒的俺との戦力差。絶対俺には叶いっこな... 彼がそう言うと、右足を地面に叩きつけた。足音が通常のタ... ドオオオォォォン! コンクリート造りの床に亀裂が走った。 「おい、お前らあぁ!」 金髪男は僕達に向けて言った。 「今から十秒数える。数え終わるまでに俺の前から消え失せろ... 所長はハッと口を閉じて彼の言葉を聞いた瞬間、 「特殊部隊と職員は全員十秒以内に持てる全ての武器であの少... (冗談じゃない、あの金髪男と戦うだって? 確かに僕達は武... 僕は全員が金髪男に気を取られている時に拳銃を構えたまま... 僕が退くと同時に機関銃と戦車の砲台の一斉射撃が始まった... 「十」 確かに聞こえた。金髪男は全く動いておらず、平然と数えて... 「九...」 激しい銃撃音とともに彼のカウントダウンが聞こえていた。... 「何で死なないんだよ!」「まさか、最後まで生きているんじ... 僕は部隊よりも大きく後ろに動き、遠くからその成り行きを... 「八......」 一秒ごとに彼の声は高く震えていくようだった。 「そ、そうだ...砲台を撃てば奴を吹き飛ばせるだろ...戦車部... 銃じゃ効かないと分かると戦車で吹き飛ばそうと考えたらし... 「七......」 「装填準備完了! 撃てえええぇぇぇ!」 彼に向かって十発の弾が発射された。 「六......」 それでも尚、彼のカウントダウンは止まらなかった。 「五、四、三、二」 彼の声は依然と聞こえ、銃撃も終わらなかった。 「手榴弾を投げて吹き飛ばせ!」 一人の特殊部隊員の言葉から三十以上の手榴弾が彼に向って... 「一」 手榴弾は一斉に爆発して、煙が独房一帯を瞬時に覆った。爆... 「零。はい、時間切れー」 彼の言葉が聞こえた時、職員や特殊部隊の顔には全てを悟っ... 「お前らさぁ...機関銃や戦車、手榴弾でこの俺を倒そうとする... 土煙が消えた時、彼の正体が分かった。 彼は全く無傷じゃなく、全部当たっていた。当たっているか... (不死身...?) その場にいた人達は驚きの色を隠せなかった。人ならざる状... そして彼はビデオの巻き戻しのように体が再生していき、一... 「銃弾って結構痛いんだぜ? 全く...まぁ、俺はそんなんじゃ... 所長はその様子を見て、 「か...怪物...」 全くその通りだ。この地球上で誰もこれほどまでの再生能力... 「あぁ、勘違いするなよ? この再生能力は生まれつきだった... 金髪男の口角は上がり、歯を見せて右手を自分の腹に向けた。 職員や特殊部隊員達は一斉に逃げ出した。 「こんなの無理だろぉ!」「銃なんか邪魔だぁ!」 彼らにはもう、闘争心なんてものは無かった。所長は右手に... 彼の銃弾は金髪男には当たっているようだったが、彼には全... 「Go to hell...」 彼はそう言い放つと、自分の右手を腹に突き刺しながら、 「出力は敵の真上より...真っすぐに」 すると先ほどの斬撃の何百倍の大きさもあろう純白の斬撃が... 「うあああぁぁぁ!」「助け...」 独房の方から夥しい喘ぎ声が聞こえた。もう誰も彼らを助け... 「何故、何故、何故こうなった...処刑するのは私の方だったの... なんとなく喘ぎ声の中からそんな声が聞こえたような気がし... 音が収まったのはすぐだった。目を開けると死体すら残って... 金髪男は突っ込んでいた手を抜いた。もちろん穴が開いた腹... 「さてと、どこへ向かおうか...」 彼は後頭部に左手をあてて、頭を掻いた。 「おい、そこのガキ」 いきなり声をかけられた。一体何をしてくるのだろう。 「は...はい...」 「上司が俺の手で殺されたんだから、復讐してやるとかないの... 彼から戦闘の意思があるか聞いてきた。もし戦っても骨の一... 「僕がもし戦えば、僕は死にます」 「だろうな」 彼のその返事は戦闘すれば終わりの宣言であった。 「僕にはこの事を誰かに報告しなければならない義務がありま... 僕は正面をしっかりと見つめる事ができなかった。目を合わ... 「出口はどこだ?」 「え? あっはい...ここの廊下を真っすぐ行って階段で一階ま... 彼は頭がボサボサに掻きむしり、数本の金色の髪が飛び回っ... 「めんどい」 「はい?」 「そんな長いルート覚えられるかよ。とりあえず真上なんだろ... 「まぁ、はい...」 「真上」という単語が彼の口から発せられた瞬間、どうやっ... 「出力を俺から真上へ」 彼がそう言うと、握りこぶしを強く力んで、拳の隙間から赤... 「じゃあな、青二才。俺はここから出る。お前もこんな賄賂だ... --------------------------------------------- 神屬戸(みやこ)にて (本当っに変わらねぇな。この町は) 脱獄には成功した。というか、「誘導された」ってのが正し... そんな中、とある電気屋のガラスケースに並んである薄型テ... 「今日、○○博物館で最大の秘宝である『椅子』が展示されます... 何となく見入ってしまった。いや、気のせいかと思った。一... 「一昨日、現人神対策庁本部が何者かの手によって火事が起き... (へぇ、どうやら派手に暴れまわっているようじゃないかぁ) 「ヴァンダー、やっぱりここに来たのね」 聞き覚えのある声。 (まさか、この町で最初に会った知り合いがこんな奴だとは....... 「お前に会うと本当に禄な事ねぇんだよ、恋愛狂信者」 「本当に失礼ね! 恋愛って素晴らしいのよ? 例えば......」 「はいはい、それ何度も聞いたっつーの」 俺は徐に後ろを振り返ってみた。 猫。着ぐるみを着た猫がいた。会って早々、理解が追い付か... 「お前、何で今日は全身猫の着ぐるみを着ているんだよ...」 数秒前を思い返してみると声が若干籠っていたような気がし... 「これ? 今日はそういう気分なの」 (どういう気分なんだよ......) 「それはともかくとして! 脱獄したってどういう事? 今更」 俺は文原に脱獄に至る経緯を言ってやった。まぁ、巻き込ま... 「へー。そゆこと。まぁ、結局その場に私がいた所でヴァンダ... (恋愛至上主義者の問題って恋の悩みしか無いと思っていたよ) 「一昨日ね、現人神対策庁が火事になったんだけど......」 「あー、やっぱついでに<十人>消えたってか?」 「なんで知っているのよ......」 (あー、まぁ予想は当たってたか) 「いや、今まで俺を最終兵器として隔離されていたのに急に処... (俺と文原を含めた十二人の主義者はどうやら他人にとっては... 十二人の主義者。主義者の中でも強大とされる人達。現人神... 「別に私は隔離に賛成していない。多数決で可決されただけ」 「十人中何人?」 隔離決定時、俺は全く知らなかったので聞いてみた。 「十人中十人」 「十人全員俺の隔離に賛成かよ。相当俺に喧嘩を売りたいらし... (嫌なら嫌だって正面向かって言えばいいのに。コソコソとや... 「落ち着いて。十二人で潰しあった瞬間、この地がどうなるか... (...) 文原はまともな事を言っているように思えるが、着ぐるみを... 「九人は殺されて、残りの一人がやった。名前はガイウス・ア... 「あれか。次代平和主義者。代が変わるごとに平和主義の性質... 先代平和主義者である嘉規元源十郎(かきもとげんじゅうろ... いいほど、足元に及ばなかった。第二次世界大戦を終結させた... 「本当に一戦交えてみてぇよ」 俺は空を仰いでそう言った。 「...なら今ここで試してみますか?」 聞いた事のある声。文原の声ではなく、男の囁き声。聞こえ... ---------------------------------------------------------... 私はその声が聞こえるまで奴の存在に気付かなかった。現平... ヴァンダーのすぐ真後ろに現れるやいなや、アリエスの右手... そしてヴァンダーは首を真っ二つに切られた。それはもう首... 「...っ!」 私は着ぐるみを煙に変化させてスーツ姿になった。 「へぇ、またあなたの能力てすか?」 彼は刀の頭に未だ手をかけていた。鞘から僅かに刀身が見えた... 「えぇ、『恋愛はため息でできた煙のようなもの』なの」 「はぁ、今まで『恋愛は...』と物や自身を一つの『恋愛』と見... 「うるさい! 私の恋愛観は正しく、全てはその原理に従う。... 「ほう...それで? これから何を? あなたの救世主である破... アリエスは右手を刀に触れたまま、目が三日月のごとき曲線... 「...ふふふ。そんなのお断りね! 何が争いは望まない? 笑... 私はアリエスが一言話した数秒の時間でどうすればいいか考... 「各人は言った。『恋は決闘です。もし右を見たり左を見たり... 私は小さなポーチから閃光弾を放った。 「...っ」 この閃光弾から彼は逃げられない。少なくとも彼よりも常に... 私はアリエスの真後ろに立った。 「なるほど、この一戦を『恋愛』と見なし、私の左右を封じた... (これで奴の視覚を塞いだ......次は何?) アリエスが左か右を見ればとにかく「敗北」。私のルールは... 「ならこうしましょう」 アリエスは刀を触るのではなく握りしめ、こちらを振り返っ... (なんで振り返れるの!) 私はアリエスの顔を見た。 彼の目は閉じていた。左右見てはいけないのならば目をつぶ... 私はとっさに恋愛はため息でできた煙なのだと念じようとし... (くっ......やっぱり、私じゃ無理なのね) すると上から黒い四角い物体が私の前に急降下してきた。 ドオォォーン 土煙が舞い上がり、思わず私は咳き込んでしまった。 (一体何が起きたの...?) 土煙が収まり、前を見るとそこには自分の約十倍もある大き... 「やっぱ、奴の言う通り瞬殺になりかけていたじゃねぇかよ...... ---------------------------------------------------------... (......) 「平和」の為に様々なモノを斬ってきた。 例えば犯罪人。 例えば軍人。 例えば武士。 例えば妖怪。 そして例えば怪物を...... 久しぶりに驚いてしまった。私の毒を塗った一太刀でここま... 「私の予想ではもう少し斬られていたはずなのに早いですね」 「俺の回復力を侮るのが悪りいんだろ? 奇襲ならもっと丁寧... (なるほど。侮りを止めろと申しますか) 私が刀に初めて触れたのは十二の時。最初は両手で精一杯振... 刀を手にしたとき私は度々こう思った。この刀を持っていれ... その時は人々は飢饉に苛まれ、豪族が世に力を見せつけ、安... 私は遂に賞金がかけられ、軍そのものが襲い掛かり、私は死... そして今は全うな軍など見当たらない。自分の本当の名前も... 「分かりました。では本気を見せましょう」 私は目を開き辺りを見渡した。 (私はもう鞘から刀を抜くことなんてないと思っていたが、今... 私は右手で刀を強く握り刀を抜いた。 ああ、まるで親しい旧友に出会えたかのごとき感動が青白い... 「どうやら本気らしいなぁ。文原、ちょっと暴れるが俺の楽し... 「どうぞ、ご勝手に......って言うか私の能力の効果が効いて... 「知らん。そんなの戦ってみねぇと分かんねぇだろ」 怪物は左足を道の灰色の石レンガに蹴りこんだと思うと私の... そして右の拳が私の視界の左上から迫ってくるのが分かった... (しかしこうでなければ......!) 私は怪物の鼻先を中心とし、放射線状に切り込み線を見据え... (横でも縦でも斜め、どれにしようか。いや考える必要なんて... 私は組糸で菱形に組まれた柄を五本の指で逃げられぬよう掴... 怪物が石レンガを蹴りこんでから私が刀を振るまでの時間、... そして私の前には誰にもいない。足元を見ると血が放射状に... 後ろを向くと、もはや肉塊などではなく、大量の血の池が広... 「久しぶりに斬らせてもらいました。楽しかったですよ破壊の... その時だった。 私の後ろ斜め下から斬撃が走った。 「一体......」 轟音とともに白い光の刃が私を包み込んだ。 (なるほど、破壊されたのですね......) ---------------------------------------------------------... 「ねぇねぇ! あの剣聖をやったよ! いやぁ、すごいねあの... 吾輩はあの剣聖に破壊者の回収を依頼してみたが、案の定負... 「諸君、見えたでしょ? まったく自殺の天才だよ、あの破壊... オークの木で出来た長いテーブルの左側、右側には先程の一... 一人はいつもどおりボロボロの灰色のTシャツを着て、髪は... 一人は吾輩に振り向く顔なんてなく、サイレンで出来ていた。 「(拍手音)」 一番上のサイレンから拍手音が出た時は決まって「最高だ!... そして私のすぐ横にいた黒い燕尾服を着た、目の隈が誰かに... 「はい、勿論拝見しました。ヴァンダリッヒ様は確かに斬られ... 「そうだよねぇ。剣聖でも運には叶わないさ。それは吾輩らに... この時を待っていた。嘉規元が戦争を終わらせてから八十年... 「ベルフェゴール君、モニター映せ。あと、ザッハトルテと紅... 執事長であるベルフェゴールは吾輩に対して一礼した後、ス... スピーカーから音が流れた。その音の源は勿論あの男女二人... 「おーい、もしもし。聞こえているかい? 吾輩だよ、吾輩。<... ベルフェゴールは後ずさりながら煙のように姿を消した。 ---------------------------------------------------------... 「あー、本当に死ぬ所だったわ」 俺は自身の肩を揉んだり、腕を組んでストレッチするなど回... すると俺が投げ落とした電光掲示板が急に電源が入った。ス... 「おーい、もしもし。聞こえているかい? 吾輩だよ、吾輩。<... 電光掲示板の画面の向こうには一人の男が映っていた。 「やあ、狂犬。久しぶり見た顔だな。負け戦でも楽しみに来た... 画面に映った軍服を着た黒髪の男は丸眼鏡をかけて痩せ細っ... 「そんな冷たい事言うなよ。ロンドン塔の所長は君を倒そうと... 俺は上を見た。すると黒い大きな風船が浮いていた。いや、... その肉塊には所々血管のようなものが絶え間なく動き、血を... 「あれは何だ」 「何って? ......www そんなの決まっている。 アレは元は... 彼は真似しがたい笑い声とは思えない声で右手で額に当てな... 「剣聖......アリエス・ガイウス。君達が戦ったのは本人の残... 「はあああぁぁぁ!」 文原は上の肉塊に対して驚きを隠せていなかった。 「ちょっとどういう事? ヴァンダーがあの剣士を確実に粉砕... 「文原だったけ?なぜ彼は自分の能力が効かないのか不思議に... 「......」 確かにアリエスは文原のチート能力に対し、一切干渉されな... 「彼の能力は......『平和ボケ』。 現実から離れて身勝手な... 画面の右横から燕尾服を着た男性が紅茶とチョコレートケー... 「うむ、ありがとう。この男の出す紅茶はやっぱり美味しいな... 軍服の男は紅茶が入った白いティーカップの取っ手に親指、... 「なるほど。つまりさっき戦った奴はその『理想論』の結果と... おそらく先程の剣士は平和主義を一切違わずに遂行しようと... 「ご名答。なら上の正体も戦ってみれば分かるはずだ。まあ、... 俺は上に浮かぶ奴の正体を聞いたが、聞いても分からなかっ... 俺には選択肢などない。そもそも相手が俺の目の前に立った... 「お前は俺の目の前にいる。倒す。それ以上もそれ以下もねぇ... 「健闘を祈るよ」 俺はポケットから鉛のような鈍い銀色の刃を持ったダガーナ... ---------------------------------------------------------... 画面の向こうで破壊者はナイフで自分を斬ったのが見えた。... (何故、人はここまでして闘争を望むのだろうか......) 私は先程将軍の左横にある純白の円い小さなテーブルに白い... 「ベルフェゴール君、うまく喧嘩を売れたよ。......いやぁ、... 将軍は口一杯にケーキを詰め込みながら言った。急いで食べ... 私は胸ポケットから黒い革で表紙を覆った手のひら程の手帳... 「そうですね、ただ余程変な現人神が現れない限り、失敗しな... 「どうして......そう思うの?」 将軍は惚けるいるようだったが、相変わらず作戦が良く言っ... 私は後ろへ目を向けた。 ボロボロの少年、蓄音機...... 蓄音機は人間のやっていい領域を超えた存在、将軍はどうや... 「あなたは負ける為にここに来たのでは?」 将軍は小さな銀色に輝くフォークを私に向けた。 「吾輩はただ負けるつもりはない。皆は『どうやって勝とう』... 「成程、それが貴公の意見ですか。実に興味深い」 将軍は勝ち戦は下手ではあるが、負け戦は得意であった。 「ベルフェゴール君、とりあえずステーキの食事がどんなもの... 私は何も言わず、啓礼してこの場を立ち去った。 (将軍、楽しみにしていますよ......この一戦でどのように負... ---------------------------------------------------------... 「で? 画面破壊してどうすんの?」 ヴァンダーが自分の体を傷つけたため、画面の内側から斬撃... 「俺はちょっとあの肉塊を壊す。お前はお前の仕事があるんだ... 「あっそ」 (はいはい、自由気ままで結構) 私はヴァンダーをそのままにしてその場を去った。 ......bbbbb 私のジャケットの内ポケットにあったスマホが鳴った。 送信した人の電話番号を見ても見覚えのない番号だった。 (一体何なの......) 思わずスマホの電源を切ってしまった。 ......bbbbb 確かに電源を切ったはずだった。しかし尚、電源が鳴り止ま... (だから何なの!) また電源を切ろうとしたが反応しない。そして勝手に受信さ... 「......」 言葉は無く、耳を澄ますと何発かの銃声がスマホから流れた。 その直後だった。気配なんて無かった。 手には紅い液体がべっとりと付着しており、激しい痛みが襲... どこから撃たれた訳ではない。きっかけとしたら銃声音だけ... スマホからはラジオ体操の曲が流れ、 「『今日も元気に体操しましょう! まずは......』」 (一体何をした? そしてこの曲を流すとかどうかしてるんじ... 「『撃たれて消えましょう! はい、一、二、三、四』」 (駄目だ......急に目の前がかすんできた.....) 私は陽気な音楽が流れ続けながら意識を失くしてしまった。 ---------------------------------------------------------... 我、音を表すことは全てを想像するに値すると思う。 彼はある日、全ての事象は音で表現できると確信し、音楽家... 同時に触覚や嗅覚も不要であった。一方、発声する口はより... 第二次世界大戦時、我は捕虜してなるべく刑が執行される日... そんな時、将軍が現れた。 彼の要求はこうだった。 「君の経歴を全て抹消し、来たる日まで隠居してくれるなら、... 我はこの申し出を受け取った。 我には音を出す以外には何もできない。何かに触れる感覚も... 表音主義者。万物はそれぞれ一つの音で表現できると主張す... 彼女はそれで死んでくれた。本当にあっけない。 それどころか、この神屬戸で政府から要注意人物とされた十... その内の九人、本当は行方不明なだけであって、死んだわけ... 将軍の考えが全く分からないのはその点だった。 この事件の発端は我が文原に「その九人が全滅されてしまっ... 「『どうして行方不明なのですか?』」 将軍のお考えが知りたかったが、笑いながら 「知りたい? でもね、教えない。だってすげぇ面白くて教え... 将軍は正直馬鹿なのか賢いのか分からなかった。その時ウザ... しかし、将軍に忠誠を誓っていたのは同情すべき過去があっ... サイレン男はオークの木の机にあったライトグリーンの液体... コツコツコツコツ...... 我の目の前の扉の奥から足音がしてきた。 おかしい。この場所を知る者は将軍と執事、貧しい病弱な少... そして、金属の蝶番でさび付いた部分が擦れ合いながら金め... 「罪人は何処かな?」 我にはその声の主の姿を目で確認する事は叶わないが、知っ... (最高裁判所の裁判長十三人の一人、飯島刑喜(いいじまけい... 彼は黒いコートに紅いネクタイを付け、白い手袋をしていた。 「『ここに何の用だ?』」 「決まっているじゃないか。 お宅が僕に対し罪を被った故に... 将軍から聞かされていた計画の一つとして、わが軍の主義者... 「最も、罪人に聞いてこの博物館にいるからと聞いて来たのだ... (「裁いた」とは?) 「で、今から君の罪を問おう。どれだけの犯罪を行ったのかな... 「『急な招かれざる客がやってきたようだな! このヒーロー... 「へぇ、それって僕が幼稚園生の時に見たアニメのセリフの声... ---------------------------------------------------------... 終了行: [[活動/霧雨]] **主義大戦 [#wf639df8] 狐砂走 錆びた黄金の器の中にはオレンジ色のスープがあり、クッキ... 百台程のモニターには世界中の「混乱」が映し出されていた... 天井に届くほど巨大なホワイトボードには十二人の顔写真が... 政府の役人が大慌てにモニターで監視しながら調べ事をして... ---------------------------------------------------------... 「ふわぁ......眠い」 ペンギンやクマ、ウサギ、アザラシ、シロイルカ等が布と綿... (私だって好きでこんな風に脅威となった訳じゃないのに......) 文原愛狸。二十一歳の恋愛至上主義者。全ては恋愛を第一優... 「全ては愛の為に。愛は全ての為に」 別にこの掛け軸は彼女が書いたものではなく、彼女がここに... 彼女は毛布の中に入っていた目覚まし時計を見て寝ようとし... 「ねーむれー、ねーむれ。ねーむれ、ねーむれ」 外から大音量で流れていた。女の子の声で子守唄のように歌... ...... 聞けば聞くほど後頭部に鉄パイプでも殴られたような眩暈と... 彼女が目を開けた瞬間、理解の追い付かない環境が待ってい... 壁や天井はビスケットのように砕け、辺りの空気を赤く染め... 「これで終わりだよ。文原さん。人々が築き上げてきた平穏や... 部屋の惨状がある事実を示していた。 彼女と笑顔の男以外の九人の「現人神」は全員抹殺されてい... (この男が全員を倒したっていうの? いや、有り得ない。ま... 私は腰のポケットから彼に悟られないようにアサルトライフ... 恋愛において片想いは一方通行であり、相手には中々気づい... 「おや? 私を撃とうとしているのですね。しかし残念ながら... 彼は私のすぐ後ろにいた。さっきまで目の前にいたはずなの... (......っ!) 本当に気付かなかった為、私の右手で掴んでいた銃が一瞬滑... 私の胸には壁や床についた紅い血が映った刃が刺さっていた... 「これで強者はいなくなりましたね。大丈夫です。あなたた... 薄れゆく意識の中で私は考えた。この俊敏さはとてもじゃな... 「お前は化け物だ」 私は後ろの彼に言い放った。 「......」 彼は少し黙ると、 「そうですね、私は化け物です。人間の中でより人間性のある... 「ねぇ、『恋愛は死なない』って知っている?」 彼の顔の表情がこわばった。人の理屈では説明が付かない事... 「絶対に許さないから」 私は彼に心臓が燃え上がり、その火が吹き出しそうな濁った... ---------------------------------------------------------- ロンドン塔にて ロンドン塔刑務所所長に一本の電話がかかった。 「私だ。そっちは終わったのか?」 所長は後ろの窓を目で確認したと思うと、所長室のドアに顔... 「......一本のメッセージが入りました。『ええ、はい。もう... 通話は「あちら」の仕事が終わった事の知らせだった。サイ... (彼は約束してくれた。権威と金を望み通りよこしてくれると... 所長は席を立つと部屋を出て地下へ向かった。 「所長、護送準備が整いました! ヴェンゲールは特別独房に... 「うむ、私も立ち会おう。もしかすると命乞いでもしてくれる... 「はい。対敵弾発射機部隊百名、戦車部隊五十名十台、機関銃... 「そうか」 職員はまるであの怪物が脱獄するなんてあり得ないと言うか... 「少し用を足しに行ってくる。くれぐれも警戒を怠らないよう... 「はい!」 所長はトイレに入ると洗面台の鏡に顔を向けた。 (私ならできる! 今までこの刑務所はあらゆる凶悪犯罪者を... 所長は自分の手を見て初めて分かった。こんなにも自分の手... (なぜ私が緊張しているのだ! 実際に護送してくれるのは職... 所長はトイレから戻ると、 「護送を開始する」 「はっ! 扉開錠!」 職員の一言により、銀行の金庫のような自分の三倍もある円... 「へー、今回は所長自身が俺の前に立つなんてどんな良い事が... 扉の向こうからもう聞く事はないと思っていた男の声が聞こ... 「今日は君の最後の日だ。何か言い残す事はないかね?」 「その態度を見るからに、今日が俺の処刑の日という訳か。... 所長にとってこの男の笑い声は聞きたくなかった。聞くたび... 「そういえば、この俺を送り付けた人達はどうした?」 「......?」 「ほら、あのヤバい十一人。噂くらい聞いてるだろ?現人神」 「どうせのんきにやっているだろ? 全く...」 ------------------------------------------------- ヴェンゲールは所長の顔つきを睨みつけた。 (あぁ、そういうこと。これは相当面白そうだなぁ) 俺は数秒目を瞑った後、妙に手が汗ばんでいる所長とその他... 「おい、お前ら。そんな装備で俺を出迎えてくれるのは嬉しい... 職員や特殊部隊は互いの顔を見合わせながら、顔を横に振っ... (あっ、やっぱり) 「こんな様子じゃ、誰も知らないってか? はぁ、ろくに俺の... 所長の目は大きく開き、息が荒くなっていた。 「お前に何ができるというのだ! 今ここにいる部隊はこの刑... 所長の頭には「冷静」という単語はもはや無かった。 (さっき、俺を閉じ込めたやつの所在を聞いたとき、知らない... 「うるせぇなぁ......久しぶりに運動してみるか」 俺は口を大きく開けると、すぐに閉じた。 ---------------------------- (どうしよう...初めてこの刑務所の職員になって何だかおっか... 僕はまだロンドン塔の職員になってまだ三か月間しか働いて... (あの金髪男、口を大きく開けて一体どうするつもりだろう?) 金髪男が口を勢いよく閉じた瞬間、職員の一人が悲鳴を上げ... 「ぎゃああああああぁぁぁぁ!」 思わず一体何があったのかと声のする方に目を向けてみた。... いや、噴き出すなんて当たり前だった。なぜなら右腕がミン... 所長は悲鳴が上がった瞬間、両肩が素早く上がって、声にも... 「一体何があった!」 所長が周りの職員に強く問いただすと、 「いきなりこの職員の真下から白い『斬撃』のようなものが出... 「そんな馬鹿な事があるか!ヤツは指一つも動かせない拘束状... 僕は金髪男の方へ目を向けた。すると、彼の拘束具は完全に... 「はぁ...あの胡散臭いオヤジに当たらなかったか...まぁ、ず... 僕は彼の口元を見て気付いた。 (あの人、歯で舌を切ったんだ! ) 彼が勢いよく口を閉じた時、舌を噛み切った。この行為をト... 僕は一瞬瞬きしてもう一回彼の口に注目した。すると、彼の... いよいよ訳が分からない。自分を傷つけたら攻撃が相手に降... 「やっぱり、出力方向言わないと駄目か......」 所長の顔は汗がだらだらと流れ、口が半開きのまま震えてい... 「君達! さっさと捕まえんか!」 所長は確かにそう言った。一、二、三、四、五、六、七、八... 所長の命令から十秒経ったが誰も動かなかった。特殊部隊は... 「おい、どうしたぁ? いつでもいいぜ? あのオヤジの言う... 誰も言い返せなかった。銃と盾をただ構えているだけだった。 「お前らの心境を当ててやろう...... 一つは迎撃態勢って言... 彼がそう言うと、銃と盾を構えなおすように僅かに体を動か... 「そして三つは...圧倒的俺との戦力差。絶対俺には叶いっこな... 彼がそう言うと、右足を地面に叩きつけた。足音が通常のタ... ドオオオォォォン! コンクリート造りの床に亀裂が走った。 「おい、お前らあぁ!」 金髪男は僕達に向けて言った。 「今から十秒数える。数え終わるまでに俺の前から消え失せろ... 所長はハッと口を閉じて彼の言葉を聞いた瞬間、 「特殊部隊と職員は全員十秒以内に持てる全ての武器であの少... (冗談じゃない、あの金髪男と戦うだって? 確かに僕達は武... 僕は全員が金髪男に気を取られている時に拳銃を構えたまま... 僕が退くと同時に機関銃と戦車の砲台の一斉射撃が始まった... 「十」 確かに聞こえた。金髪男は全く動いておらず、平然と数えて... 「九...」 激しい銃撃音とともに彼のカウントダウンが聞こえていた。... 「何で死なないんだよ!」「まさか、最後まで生きているんじ... 僕は部隊よりも大きく後ろに動き、遠くからその成り行きを... 「八......」 一秒ごとに彼の声は高く震えていくようだった。 「そ、そうだ...砲台を撃てば奴を吹き飛ばせるだろ...戦車部... 銃じゃ効かないと分かると戦車で吹き飛ばそうと考えたらし... 「七......」 「装填準備完了! 撃てえええぇぇぇ!」 彼に向かって十発の弾が発射された。 「六......」 それでも尚、彼のカウントダウンは止まらなかった。 「五、四、三、二」 彼の声は依然と聞こえ、銃撃も終わらなかった。 「手榴弾を投げて吹き飛ばせ!」 一人の特殊部隊員の言葉から三十以上の手榴弾が彼に向って... 「一」 手榴弾は一斉に爆発して、煙が独房一帯を瞬時に覆った。爆... 「零。はい、時間切れー」 彼の言葉が聞こえた時、職員や特殊部隊の顔には全てを悟っ... 「お前らさぁ...機関銃や戦車、手榴弾でこの俺を倒そうとする... 土煙が消えた時、彼の正体が分かった。 彼は全く無傷じゃなく、全部当たっていた。当たっているか... (不死身...?) その場にいた人達は驚きの色を隠せなかった。人ならざる状... そして彼はビデオの巻き戻しのように体が再生していき、一... 「銃弾って結構痛いんだぜ? 全く...まぁ、俺はそんなんじゃ... 所長はその様子を見て、 「か...怪物...」 全くその通りだ。この地球上で誰もこれほどまでの再生能力... 「あぁ、勘違いするなよ? この再生能力は生まれつきだった... 金髪男の口角は上がり、歯を見せて右手を自分の腹に向けた。 職員や特殊部隊員達は一斉に逃げ出した。 「こんなの無理だろぉ!」「銃なんか邪魔だぁ!」 彼らにはもう、闘争心なんてものは無かった。所長は右手に... 彼の銃弾は金髪男には当たっているようだったが、彼には全... 「Go to hell...」 彼はそう言い放つと、自分の右手を腹に突き刺しながら、 「出力は敵の真上より...真っすぐに」 すると先ほどの斬撃の何百倍の大きさもあろう純白の斬撃が... 「うあああぁぁぁ!」「助け...」 独房の方から夥しい喘ぎ声が聞こえた。もう誰も彼らを助け... 「何故、何故、何故こうなった...処刑するのは私の方だったの... なんとなく喘ぎ声の中からそんな声が聞こえたような気がし... 音が収まったのはすぐだった。目を開けると死体すら残って... 金髪男は突っ込んでいた手を抜いた。もちろん穴が開いた腹... 「さてと、どこへ向かおうか...」 彼は後頭部に左手をあてて、頭を掻いた。 「おい、そこのガキ」 いきなり声をかけられた。一体何をしてくるのだろう。 「は...はい...」 「上司が俺の手で殺されたんだから、復讐してやるとかないの... 彼から戦闘の意思があるか聞いてきた。もし戦っても骨の一... 「僕がもし戦えば、僕は死にます」 「だろうな」 彼のその返事は戦闘すれば終わりの宣言であった。 「僕にはこの事を誰かに報告しなければならない義務がありま... 僕は正面をしっかりと見つめる事ができなかった。目を合わ... 「出口はどこだ?」 「え? あっはい...ここの廊下を真っすぐ行って階段で一階ま... 彼は頭がボサボサに掻きむしり、数本の金色の髪が飛び回っ... 「めんどい」 「はい?」 「そんな長いルート覚えられるかよ。とりあえず真上なんだろ... 「まぁ、はい...」 「真上」という単語が彼の口から発せられた瞬間、どうやっ... 「出力を俺から真上へ」 彼がそう言うと、握りこぶしを強く力んで、拳の隙間から赤... 「じゃあな、青二才。俺はここから出る。お前もこんな賄賂だ... --------------------------------------------- 神屬戸(みやこ)にて (本当っに変わらねぇな。この町は) 脱獄には成功した。というか、「誘導された」ってのが正し... そんな中、とある電気屋のガラスケースに並んである薄型テ... 「今日、○○博物館で最大の秘宝である『椅子』が展示されます... 何となく見入ってしまった。いや、気のせいかと思った。一... 「一昨日、現人神対策庁本部が何者かの手によって火事が起き... (へぇ、どうやら派手に暴れまわっているようじゃないかぁ) 「ヴァンダー、やっぱりここに来たのね」 聞き覚えのある声。 (まさか、この町で最初に会った知り合いがこんな奴だとは....... 「お前に会うと本当に禄な事ねぇんだよ、恋愛狂信者」 「本当に失礼ね! 恋愛って素晴らしいのよ? 例えば......」 「はいはい、それ何度も聞いたっつーの」 俺は徐に後ろを振り返ってみた。 猫。着ぐるみを着た猫がいた。会って早々、理解が追い付か... 「お前、何で今日は全身猫の着ぐるみを着ているんだよ...」 数秒前を思い返してみると声が若干籠っていたような気がし... 「これ? 今日はそういう気分なの」 (どういう気分なんだよ......) 「それはともかくとして! 脱獄したってどういう事? 今更」 俺は文原に脱獄に至る経緯を言ってやった。まぁ、巻き込ま... 「へー。そゆこと。まぁ、結局その場に私がいた所でヴァンダ... (恋愛至上主義者の問題って恋の悩みしか無いと思っていたよ) 「一昨日ね、現人神対策庁が火事になったんだけど......」 「あー、やっぱついでに<十人>消えたってか?」 「なんで知っているのよ......」 (あー、まぁ予想は当たってたか) 「いや、今まで俺を最終兵器として隔離されていたのに急に処... (俺と文原を含めた十二人の主義者はどうやら他人にとっては... 十二人の主義者。主義者の中でも強大とされる人達。現人神... 「別に私は隔離に賛成していない。多数決で可決されただけ」 「十人中何人?」 隔離決定時、俺は全く知らなかったので聞いてみた。 「十人中十人」 「十人全員俺の隔離に賛成かよ。相当俺に喧嘩を売りたいらし... (嫌なら嫌だって正面向かって言えばいいのに。コソコソとや... 「落ち着いて。十二人で潰しあった瞬間、この地がどうなるか... (...) 文原はまともな事を言っているように思えるが、着ぐるみを... 「九人は殺されて、残りの一人がやった。名前はガイウス・ア... 「あれか。次代平和主義者。代が変わるごとに平和主義の性質... 先代平和主義者である嘉規元源十郎(かきもとげんじゅうろ... いいほど、足元に及ばなかった。第二次世界大戦を終結させた... 「本当に一戦交えてみてぇよ」 俺は空を仰いでそう言った。 「...なら今ここで試してみますか?」 聞いた事のある声。文原の声ではなく、男の囁き声。聞こえ... ---------------------------------------------------------... 私はその声が聞こえるまで奴の存在に気付かなかった。現平... ヴァンダーのすぐ真後ろに現れるやいなや、アリエスの右手... そしてヴァンダーは首を真っ二つに切られた。それはもう首... 「...っ!」 私は着ぐるみを煙に変化させてスーツ姿になった。 「へぇ、またあなたの能力てすか?」 彼は刀の頭に未だ手をかけていた。鞘から僅かに刀身が見えた... 「えぇ、『恋愛はため息でできた煙のようなもの』なの」 「はぁ、今まで『恋愛は...』と物や自身を一つの『恋愛』と見... 「うるさい! 私の恋愛観は正しく、全てはその原理に従う。... 「ほう...それで? これから何を? あなたの救世主である破... アリエスは右手を刀に触れたまま、目が三日月のごとき曲線... 「...ふふふ。そんなのお断りね! 何が争いは望まない? 笑... 私はアリエスが一言話した数秒の時間でどうすればいいか考... 「各人は言った。『恋は決闘です。もし右を見たり左を見たり... 私は小さなポーチから閃光弾を放った。 「...っ」 この閃光弾から彼は逃げられない。少なくとも彼よりも常に... 私はアリエスの真後ろに立った。 「なるほど、この一戦を『恋愛』と見なし、私の左右を封じた... (これで奴の視覚を塞いだ......次は何?) アリエスが左か右を見ればとにかく「敗北」。私のルールは... 「ならこうしましょう」 アリエスは刀を触るのではなく握りしめ、こちらを振り返っ... (なんで振り返れるの!) 私はアリエスの顔を見た。 彼の目は閉じていた。左右見てはいけないのならば目をつぶ... 私はとっさに恋愛はため息でできた煙なのだと念じようとし... (くっ......やっぱり、私じゃ無理なのね) すると上から黒い四角い物体が私の前に急降下してきた。 ドオォォーン 土煙が舞い上がり、思わず私は咳き込んでしまった。 (一体何が起きたの...?) 土煙が収まり、前を見るとそこには自分の約十倍もある大き... 「やっぱ、奴の言う通り瞬殺になりかけていたじゃねぇかよ...... ---------------------------------------------------------... (......) 「平和」の為に様々なモノを斬ってきた。 例えば犯罪人。 例えば軍人。 例えば武士。 例えば妖怪。 そして例えば怪物を...... 久しぶりに驚いてしまった。私の毒を塗った一太刀でここま... 「私の予想ではもう少し斬られていたはずなのに早いですね」 「俺の回復力を侮るのが悪りいんだろ? 奇襲ならもっと丁寧... (なるほど。侮りを止めろと申しますか) 私が刀に初めて触れたのは十二の時。最初は両手で精一杯振... 刀を手にしたとき私は度々こう思った。この刀を持っていれ... その時は人々は飢饉に苛まれ、豪族が世に力を見せつけ、安... 私は遂に賞金がかけられ、軍そのものが襲い掛かり、私は死... そして今は全うな軍など見当たらない。自分の本当の名前も... 「分かりました。では本気を見せましょう」 私は目を開き辺りを見渡した。 (私はもう鞘から刀を抜くことなんてないと思っていたが、今... 私は右手で刀を強く握り刀を抜いた。 ああ、まるで親しい旧友に出会えたかのごとき感動が青白い... 「どうやら本気らしいなぁ。文原、ちょっと暴れるが俺の楽し... 「どうぞ、ご勝手に......って言うか私の能力の効果が効いて... 「知らん。そんなの戦ってみねぇと分かんねぇだろ」 怪物は左足を道の灰色の石レンガに蹴りこんだと思うと私の... そして右の拳が私の視界の左上から迫ってくるのが分かった... (しかしこうでなければ......!) 私は怪物の鼻先を中心とし、放射線状に切り込み線を見据え... (横でも縦でも斜め、どれにしようか。いや考える必要なんて... 私は組糸で菱形に組まれた柄を五本の指で逃げられぬよう掴... 怪物が石レンガを蹴りこんでから私が刀を振るまでの時間、... そして私の前には誰にもいない。足元を見ると血が放射状に... 後ろを向くと、もはや肉塊などではなく、大量の血の池が広... 「久しぶりに斬らせてもらいました。楽しかったですよ破壊の... その時だった。 私の後ろ斜め下から斬撃が走った。 「一体......」 轟音とともに白い光の刃が私を包み込んだ。 (なるほど、破壊されたのですね......) ---------------------------------------------------------... 「ねぇねぇ! あの剣聖をやったよ! いやぁ、すごいねあの... 吾輩はあの剣聖に破壊者の回収を依頼してみたが、案の定負... 「諸君、見えたでしょ? まったく自殺の天才だよ、あの破壊... オークの木で出来た長いテーブルの左側、右側には先程の一... 一人はいつもどおりボロボロの灰色のTシャツを着て、髪は... 一人は吾輩に振り向く顔なんてなく、サイレンで出来ていた。 「(拍手音)」 一番上のサイレンから拍手音が出た時は決まって「最高だ!... そして私のすぐ横にいた黒い燕尾服を着た、目の隈が誰かに... 「はい、勿論拝見しました。ヴァンダリッヒ様は確かに斬られ... 「そうだよねぇ。剣聖でも運には叶わないさ。それは吾輩らに... この時を待っていた。嘉規元が戦争を終わらせてから八十年... 「ベルフェゴール君、モニター映せ。あと、ザッハトルテと紅... 執事長であるベルフェゴールは吾輩に対して一礼した後、ス... スピーカーから音が流れた。その音の源は勿論あの男女二人... 「おーい、もしもし。聞こえているかい? 吾輩だよ、吾輩。<... ベルフェゴールは後ずさりながら煙のように姿を消した。 ---------------------------------------------------------... 「あー、本当に死ぬ所だったわ」 俺は自身の肩を揉んだり、腕を組んでストレッチするなど回... すると俺が投げ落とした電光掲示板が急に電源が入った。ス... 「おーい、もしもし。聞こえているかい? 吾輩だよ、吾輩。<... 電光掲示板の画面の向こうには一人の男が映っていた。 「やあ、狂犬。久しぶり見た顔だな。負け戦でも楽しみに来た... 画面に映った軍服を着た黒髪の男は丸眼鏡をかけて痩せ細っ... 「そんな冷たい事言うなよ。ロンドン塔の所長は君を倒そうと... 俺は上を見た。すると黒い大きな風船が浮いていた。いや、... その肉塊には所々血管のようなものが絶え間なく動き、血を... 「あれは何だ」 「何って? ......www そんなの決まっている。 アレは元は... 彼は真似しがたい笑い声とは思えない声で右手で額に当てな... 「剣聖......アリエス・ガイウス。君達が戦ったのは本人の残... 「はあああぁぁぁ!」 文原は上の肉塊に対して驚きを隠せていなかった。 「ちょっとどういう事? ヴァンダーがあの剣士を確実に粉砕... 「文原だったけ?なぜ彼は自分の能力が効かないのか不思議に... 「......」 確かにアリエスは文原のチート能力に対し、一切干渉されな... 「彼の能力は......『平和ボケ』。 現実から離れて身勝手な... 画面の右横から燕尾服を着た男性が紅茶とチョコレートケー... 「うむ、ありがとう。この男の出す紅茶はやっぱり美味しいな... 軍服の男は紅茶が入った白いティーカップの取っ手に親指、... 「なるほど。つまりさっき戦った奴はその『理想論』の結果と... おそらく先程の剣士は平和主義を一切違わずに遂行しようと... 「ご名答。なら上の正体も戦ってみれば分かるはずだ。まあ、... 俺は上に浮かぶ奴の正体を聞いたが、聞いても分からなかっ... 俺には選択肢などない。そもそも相手が俺の目の前に立った... 「お前は俺の目の前にいる。倒す。それ以上もそれ以下もねぇ... 「健闘を祈るよ」 俺はポケットから鉛のような鈍い銀色の刃を持ったダガーナ... ---------------------------------------------------------... 画面の向こうで破壊者はナイフで自分を斬ったのが見えた。... (何故、人はここまでして闘争を望むのだろうか......) 私は先程将軍の左横にある純白の円い小さなテーブルに白い... 「ベルフェゴール君、うまく喧嘩を売れたよ。......いやぁ、... 将軍は口一杯にケーキを詰め込みながら言った。急いで食べ... 私は胸ポケットから黒い革で表紙を覆った手のひら程の手帳... 「そうですね、ただ余程変な現人神が現れない限り、失敗しな... 「どうして......そう思うの?」 将軍は惚けるいるようだったが、相変わらず作戦が良く言っ... 私は後ろへ目を向けた。 ボロボロの少年、蓄音機...... 蓄音機は人間のやっていい領域を超えた存在、将軍はどうや... 「あなたは負ける為にここに来たのでは?」 将軍は小さな銀色に輝くフォークを私に向けた。 「吾輩はただ負けるつもりはない。皆は『どうやって勝とう』... 「成程、それが貴公の意見ですか。実に興味深い」 将軍は勝ち戦は下手ではあるが、負け戦は得意であった。 「ベルフェゴール君、とりあえずステーキの食事がどんなもの... 私は何も言わず、啓礼してこの場を立ち去った。 (将軍、楽しみにしていますよ......この一戦でどのように負... ---------------------------------------------------------... 「で? 画面破壊してどうすんの?」 ヴァンダーが自分の体を傷つけたため、画面の内側から斬撃... 「俺はちょっとあの肉塊を壊す。お前はお前の仕事があるんだ... 「あっそ」 (はいはい、自由気ままで結構) 私はヴァンダーをそのままにしてその場を去った。 ......bbbbb 私のジャケットの内ポケットにあったスマホが鳴った。 送信した人の電話番号を見ても見覚えのない番号だった。 (一体何なの......) 思わずスマホの電源を切ってしまった。 ......bbbbb 確かに電源を切ったはずだった。しかし尚、電源が鳴り止ま... (だから何なの!) また電源を切ろうとしたが反応しない。そして勝手に受信さ... 「......」 言葉は無く、耳を澄ますと何発かの銃声がスマホから流れた。 その直後だった。気配なんて無かった。 手には紅い液体がべっとりと付着しており、激しい痛みが襲... どこから撃たれた訳ではない。きっかけとしたら銃声音だけ... スマホからはラジオ体操の曲が流れ、 「『今日も元気に体操しましょう! まずは......』」 (一体何をした? そしてこの曲を流すとかどうかしてるんじ... 「『撃たれて消えましょう! はい、一、二、三、四』」 (駄目だ......急に目の前がかすんできた.....) 私は陽気な音楽が流れ続けながら意識を失くしてしまった。 ---------------------------------------------------------... 我、音を表すことは全てを想像するに値すると思う。 彼はある日、全ての事象は音で表現できると確信し、音楽家... 同時に触覚や嗅覚も不要であった。一方、発声する口はより... 第二次世界大戦時、我は捕虜してなるべく刑が執行される日... そんな時、将軍が現れた。 彼の要求はこうだった。 「君の経歴を全て抹消し、来たる日まで隠居してくれるなら、... 我はこの申し出を受け取った。 我には音を出す以外には何もできない。何かに触れる感覚も... 表音主義者。万物はそれぞれ一つの音で表現できると主張す... 彼女はそれで死んでくれた。本当にあっけない。 それどころか、この神屬戸で政府から要注意人物とされた十... その内の九人、本当は行方不明なだけであって、死んだわけ... 将軍の考えが全く分からないのはその点だった。 この事件の発端は我が文原に「その九人が全滅されてしまっ... 「『どうして行方不明なのですか?』」 将軍のお考えが知りたかったが、笑いながら 「知りたい? でもね、教えない。だってすげぇ面白くて教え... 将軍は正直馬鹿なのか賢いのか分からなかった。その時ウザ... しかし、将軍に忠誠を誓っていたのは同情すべき過去があっ... サイレン男はオークの木の机にあったライトグリーンの液体... コツコツコツコツ...... 我の目の前の扉の奥から足音がしてきた。 おかしい。この場所を知る者は将軍と執事、貧しい病弱な少... そして、金属の蝶番でさび付いた部分が擦れ合いながら金め... 「罪人は何処かな?」 我にはその声の主の姿を目で確認する事は叶わないが、知っ... (最高裁判所の裁判長十三人の一人、飯島刑喜(いいじまけい... 彼は黒いコートに紅いネクタイを付け、白い手袋をしていた。 「『ここに何の用だ?』」 「決まっているじゃないか。 お宅が僕に対し罪を被った故に... 将軍から聞かされていた計画の一つとして、わが軍の主義者... 「最も、罪人に聞いてこの博物館にいるからと聞いて来たのだ... (「裁いた」とは?) 「で、今から君の罪を問おう。どれだけの犯罪を行ったのかな... 「『急な招かれざる客がやってきたようだな! このヒーロー... 「へぇ、それって僕が幼稚園生の時に見たアニメのセリフの声... ---------------------------------------------------------... ページ名: