開始行: #navi(活動/霧雨/vol.2) *or ―― [[哉>部員紹介]] [#c39da67e] ~ いるものと、いらないもの。 「これはいるの?」押入れをほうから晶の声がした。「ていう... そちらに振り返ると、ぼろぼろになった緑色のビニールを掴... 「ああ、それは」記憶の箪笥を引っ掻き回す。「薬局の、おま... 両手でビニールを広げると、デフォルメされた蛙が寂しそう... 「もういらないよね?」と言いながらも、すでにゴミ袋の中に... 小学生のときは、わざわざあの風船が欲しくて、たいした怪... 片づけが趣味という晶を自宅に招いたのが、そもそもの発端... 気は進まなかったけれど、これを機に一念発起して、懐かし... 彼女は押入れを、僕は本棚とCDラックを分担して整理するこ... アルファベッド順にCDのタイトルを揃えていると、また晶が... 「これは、いる?」 彼女が掴んでいたのは、茶色の毛糸で編まれた、一目で素人... 「……懐かしいな」 それを受け取って、驚くほど感傷的になっている自分がいた。 「どうしたの?」晶が心配そうに、忙しなく動かしていた手を... 「そう」と頷いただけでは不満そうに睨んでくるので、包み隠... 十一月二十三日。秋でもなく冬でもなく、なんの記念日でも... 「…………女の子から?」 「うん。でも、これをもらったあとすぐに、彼女は転校したか... 肯定する僕の言葉に、晶は複雑な笑みを浮かべて、その埃が... 「なんで腹巻なのかな」 「マフラーを編んでたらしいんだけど、長くなりすぎたからっ... あの頃の思い出は、いまも鮮烈な色彩を放ったまま僕の頭の... 「あれ? マフラーはどうしたの?」 「マフラーは別の人。僕はおまけなんだ」ただ、誕生日が一緒... さっきのおまけの蛙の風船と違って、これは僕が主役の話で... 昔の出来事に耽っていると、晶が僕の肩を叩いた。 「元気出しなって。あたしがいるじゃない」そして、押入れの... 「そうだね。僕には、君がいることだし」 今度は何もすがることなく、僕はそれをゴミ袋の中に入れる。 ~ * * * * * ~ 校舎の陰に隠れていた裕子は、戻ってきたわたしに向かって... 言えるわけない。本当は冬になる前には完成させたかったマ... 「バカだねぇ」と天を仰ぐ裕子と一緒に、オレンジ色に染まっ... 「それは、そうだけど」多分、いまのわたしの頬は、夕日に染... 肩を落として、とぼとぼと歩くわたしが心配になったのか、... その無邪気な笑顔を見て、わたしもあの時に、彼に笑顔を作... 「でも、あれで良かったの?」裕子が遠くの鰯雲を眺めながら... 「うん。いいの、これで。別れるとき、余計に悲しくなるくら... わたしは、ショーケースのガラス越しに眺める世界に憧れを... と、無理やりに自分自身を納得させる。 十一月二十三日。秋でもなくて、冬でもなくて、なにかの記... 妙にしんみりした空気に耐えられなくなった裕子が、田圃の... 二人して叫び疲れた頃に、裕子がわたしの背中に乗っかって... 「何か食べて帰ろう。今日はわたしが奢ってあげるからさ」 永遠を、願えば願うほどに、空しくなって涙がこみあげてく... 色艶やかな夕日に、わたしはそう祈っていたのだ。 ~ CENTER:''(了)'' ~ ~ *この作品を評価を評価する [#k8f9f9be] #rating() #navi(活動/霧雨/vol.2) 終了行: #navi(活動/霧雨/vol.2) *or ―― [[哉>部員紹介]] [#c39da67e] ~ いるものと、いらないもの。 「これはいるの?」押入れをほうから晶の声がした。「ていう... そちらに振り返ると、ぼろぼろになった緑色のビニールを掴... 「ああ、それは」記憶の箪笥を引っ掻き回す。「薬局の、おま... 両手でビニールを広げると、デフォルメされた蛙が寂しそう... 「もういらないよね?」と言いながらも、すでにゴミ袋の中に... 小学生のときは、わざわざあの風船が欲しくて、たいした怪... 片づけが趣味という晶を自宅に招いたのが、そもそもの発端... 気は進まなかったけれど、これを機に一念発起して、懐かし... 彼女は押入れを、僕は本棚とCDラックを分担して整理するこ... アルファベッド順にCDのタイトルを揃えていると、また晶が... 「これは、いる?」 彼女が掴んでいたのは、茶色の毛糸で編まれた、一目で素人... 「……懐かしいな」 それを受け取って、驚くほど感傷的になっている自分がいた。 「どうしたの?」晶が心配そうに、忙しなく動かしていた手を... 「そう」と頷いただけでは不満そうに睨んでくるので、包み隠... 十一月二十三日。秋でもなく冬でもなく、なんの記念日でも... 「…………女の子から?」 「うん。でも、これをもらったあとすぐに、彼女は転校したか... 肯定する僕の言葉に、晶は複雑な笑みを浮かべて、その埃が... 「なんで腹巻なのかな」 「マフラーを編んでたらしいんだけど、長くなりすぎたからっ... あの頃の思い出は、いまも鮮烈な色彩を放ったまま僕の頭の... 「あれ? マフラーはどうしたの?」 「マフラーは別の人。僕はおまけなんだ」ただ、誕生日が一緒... さっきのおまけの蛙の風船と違って、これは僕が主役の話で... 昔の出来事に耽っていると、晶が僕の肩を叩いた。 「元気出しなって。あたしがいるじゃない」そして、押入れの... 「そうだね。僕には、君がいることだし」 今度は何もすがることなく、僕はそれをゴミ袋の中に入れる。 ~ * * * * * ~ 校舎の陰に隠れていた裕子は、戻ってきたわたしに向かって... 言えるわけない。本当は冬になる前には完成させたかったマ... 「バカだねぇ」と天を仰ぐ裕子と一緒に、オレンジ色に染まっ... 「それは、そうだけど」多分、いまのわたしの頬は、夕日に染... 肩を落として、とぼとぼと歩くわたしが心配になったのか、... その無邪気な笑顔を見て、わたしもあの時に、彼に笑顔を作... 「でも、あれで良かったの?」裕子が遠くの鰯雲を眺めながら... 「うん。いいの、これで。別れるとき、余計に悲しくなるくら... わたしは、ショーケースのガラス越しに眺める世界に憧れを... と、無理やりに自分自身を納得させる。 十一月二十三日。秋でもなくて、冬でもなくて、なにかの記... 妙にしんみりした空気に耐えられなくなった裕子が、田圃の... 二人して叫び疲れた頃に、裕子がわたしの背中に乗っかって... 「何か食べて帰ろう。今日はわたしが奢ってあげるからさ」 永遠を、願えば願うほどに、空しくなって涙がこみあげてく... 色艶やかな夕日に、わたしはそう祈っていたのだ。 ~ CENTER:''(了)'' ~ ~ *この作品を評価を評価する [#k8f9f9be] #rating() #navi(活動/霧雨/vol.2) ページ名: