開始行: [[活動/霧雨]] **鉛筆の騎士 試作品 [#v002a543] そう 夜、街灯が地上に輝く星のように闇を照らしている街の片隅... 「ここがもう一つの世界」 歪みから出てきたうちの一人がつぶやく。 「探すぞ」 もう一人が命令口調で指図しゆっくりと歩き出した。 同時刻、街の中心付近にあるビルの一室のこと。そこには十数... 「空間に歪みが発生しました! 今までの中で一番大きいです」 三十代前半ほどの男性がパソコンを見ながら叫ぶ。 「そうか……遂に来ましたか」 部屋の一番奥の机にいる男がメガネを光らせつぶやいた。彼... * 早春の土手。芽吹いた緑にようやく暖かい風がそよぐ道で高... 「何してるの?」 一人の女子が彼に話しかける。 「お、あぁ。お前か……」 彼は眠そうに答える。 「もう。またそんなとこで寝て」 少年は少し右手をずらし、少女の肩まで届く黒い髪が風にな... 「どうしたの?」 「いや、なんかさ。明日から春休みなんだなって」 「そうだね」 少女は少年の横に腰を降ろす。 「色々あったな」 「色々あったねぇ」 微笑みながら返す。 「もう一年になるのかぁって思うと早いよな」 「そうだね。え? もうこの街に来て一年なの! 早っ!」 「さっき終業式終わったばっかだろ」 「あはははは。早いねぇ」 少女はぼんやりと空を見上げる。 「ねぇ、志智(しち)、おじさん元気してるかな」 「さぁな。でも時々手紙もらってるだろ?」 「そうだけどさ、会ってみないと分からないことってあるじゃ... 「そうだな……」 志智は足を大きく振り上げ、その反動で起き上がる。 「帰るか。手紙来てるかもしれねぇし。あ、うちに来て一緒に... * 昼間にもかかわらず薄暗い路地で二人の男が話していた。男... 「で、どうやって探すんだ?」 つぶやいた男は身長はもう一人よりも頭一つ分高く、黒髪が... 「手当たり次第に探すしかないかもな」 返事をした男は二十代の男性の平均身長ほどで長身の男と違... 「手当たり次第って」 「仕方ないだろう。こちらは顔も名前も知らない。あるのは近... 「それもそうか……」 長身の男は頭をかきむしりながらしぶしぶ納得する。 「こんな路地裏で怪しい服装の男が二人何してるんだ?」 頭上からの声に二人は視線を上げると、二階の建物の屋上か... 「何者だ?」 髪のない男が地面に着地した黒いコートの男に訊ねる。 「それはこちらの台詞だ。侵略者」 男はコートから取り出した黒い銃を構え氷よりも冷たい、否... 「これは面倒だな」 長髪の男が体の前に出す。と同時に黒いコートの男が発砲す... 「それがお前の本当の姿か」 長髪の男の姿は身長や体型は変わっていないが、先ほどまで... 「ならばこちらも姿を変えさせてもらおう」 黒いコートの男は懐から藍色の文庫本サイズの角が丸い長方... 「逃げるぞ」 姿を変えていなかったもう一人が提案すると、長髪の怪人は... 「くっ!」 黒いコートの男は思わず手で顔面をガードする。砂埃が晴れ... 「くそ……逃がしたか……」 * [#r43cd5c8] 「これだ」 高校から徒歩十五分ほどある住宅街にある一つのマンション... 「中身見ていい?」 「あぁ」 少女も目を輝かせながら封筒を開け、中の手紙に目を通す。 「そういや、七香(なのか)に届いた手紙も後で見ていいか?」 「え、あ、う、うん」 七香と呼ばれた少女は志智から視線を逸らし、頬を赤らめる。 「どうした?」 「また今度ね」 「おう」 ピンポーン! インターホンの音が鳴り響く。 「誰だ?」 志智は首をかしげながら、玄関へ向かいドアを開ける。 「はい」 ドアを開けた先には緑の服を着た二十代半ばの男性が机の引... 「宅急便です」 「あ、ありがとうございます」 配達員から荷物を受け取り部屋に戻る。 「何が届いたの? おじさんからの手紙、じゃなさそうだね」 「差出人はおじさんなんだけどな。でも手紙だけだったら封筒... 志智も七香も固い表情で首を傾げる。 「まぁとりあえず開けてみるか」 机からカッターを取り出し、届いた段ボールの箱を開封する。 「なんだこれ?」 段ボールの中には一番上に手紙が入っていそうな封筒と取扱... 「何かのケース?」 七香は取り出したのは文庫本サイズの角が丸い長方形の赤紫... 「何だろこの穴?」 物体の側面には一つだけ鉛筆が入りそうな穴がある。 「鉛筆削りかな?」 「鉛筆とかもう使わないだろ」 「そうだよねぇ……ねぇ、今志智が持ってるのって……」 「だよなぁ」 しかめ面をしている志智が今手に持っている黒い長方形のケ... 「手に持った感触だと鉛筆が一ダースって感じ」 「手紙読んでみるね」 七香がダンボールに入っていた封筒を開封する。 「……これから侵略者が君たちを襲ってくるから、これを使って... 「俺にも見せて」 志智も七香が読んでいた手紙にのぞき込むようにして目を通... 「異世界からの侵略者が襲ってくる?」 二人は首を傾げる。二人は孤児院でお世話になったおじさん... 「まぁ、いいか」 「いいの?」 「よくはないけど、分からないし」 七香は志智に手紙を手渡し、先ほど取り出した取扱説明書と... 「何だそれ?」 「取扱説明書らしいよ。これを読んだら何か分かるかも」 「なるほどな。読み終わったら貸してくれ」 「分かったー」 七香が説明書を読んでいる間に志智は箱の中にまだ残ってい... 「これは俗に言う変身ベルトで『ドライバー』っていう名前み... 説明書を読みながら七香が話しかける。 「変身ベルトって日曜の朝にやってる番組みたいだな」 「そうだね」 「使い方はベルトを装着して、丸い穴にこの鉛筆状の物を入れ... 「さっき七香が言ってた鉛筆削りっていうのは意外と近かった... 「あはは。確かに」 二人は先ほどまでと違い、談笑していた。 「装着する鉛筆によって能力が変わるみたい」 「黒が三箱、赤、青、空色が一箱ずつ入ってるな」 「黒だけやたら多いね」 「なんでだろうな。とりあえず説明書貸してくれ」 「いいよ」 七香は取扱説明書と書かれた冊子を志智に手渡す。冊子をパ... 「あ、うん。なんかよく分からないけど、とりあえず使ってみ... 「え、使うの?」 「正直怪しいし怖いけど、説明書読んだだけじゃよく分からな... 「うん。分かった」 七香は先ほど不思議そうに眺めていた物体をおそるおそる志... 「えっと、確か腰に装着するんだよな。向きはと……」 説明書を眺めながら、手渡されたドライバーを腰につけると... 「巻き付いた!」 「え、何これ凄い!」 志智が戸惑う中、七香は目を輝かせながら彼が装着したドラ... 「で、えっと、穴に棒、鉛筆を差し込むんだな」 「そうみたいだね」 志智はケースから黒い鉛筆状のアイテムを一本取り出し、お... 「で、回すと」 ゆっくりと一回転させた時、志智の体に異変が起きた。 「ぐっ!」 突然、体に電流が流れたように膝が地面に衝突する。 「志智!」 「あぁああああああああああ!」 志智は喉元をかきむしりながら地面でのたうち回る。 「志智! 志智!」 七香は目を見開きながら駆け寄り、彼の体を揺さぶる。 「そうだ! 説明書!」 志智がさっきまで手に取っていた説明書を勢いよく掴み、震... 「何これ?」 七香は自身の血の気が引くのを感じた。 「このドライバーは失敗作。今まで死刑囚七人を実験体として... 七香の瞳に涙がこみ上げてくる。説明書を投げ捨て、志智の... 「志智! お願い! 死なないで! お願い! ねぇ!」 握った手を額に当て、涙が頬を流れる。 「はぁ……はぁ……七香……」 志智は小刻みに震える左手で腰に巻き付いたドライバーを外... 「しぃちぃ……!」 上体を起こした志智に飛びついた。 「よかった! 死ななくて……生きててくれて、本当に……」 「……おう」 自身の胸で泣きじゃくる彼女の背中をそっと撫でた。 三十分ほど経ち落ち着いた七香から解放された志智はベッド... 「鉛筆少し削れてるね」 七香が眺めている鉛筆は先端が鉛筆削りで削ったかのように... 「なるほど。だから鉛筆だけ大量にあったのか」 「消耗品だもんね」 「説明書はちゃんと読まないとダメだな」 「ごめんね。私もそこまでちゃんと読んでなくて」 「俺もちゃんと読んでなかったしな……次使うときにはちゃんと... 「え! また使うの?」 七香は目を見開く。 「おじさんがわざわざ送ってきてくれたってことは俺たちにな... 「そ、それは一理あるけど……だったら私が――」 「いや、俺が使う」 志智が七香の言葉を遮り言葉を続ける。 「七香が使える可能性はあるけど、俺の方に送られたってこと... 「うぅ……」 七香が不服そうにうなる様子に志智は頭を掻いて小さく息を... 「じゃあ、俺が起き上がるまでに説明書をもう一回読んでくれ... 「分かった! 任せて!」 七香は目を輝かせどこから取り出したか分からない伊達メガ... 「……鉛筆状のアイテムの名前は『ペンシル』……変身するとペン... ぐぅううう。 「あ……」 ブツブツ独り言をつぶやきながら説明書を読んでいた七香が... 「そういや、三時過ぎか……なんかおやつ食うか?」 「食べる!」 目を輝かせて冷蔵庫の扉を開くが――。 「何もない……」 七香は水と食パン以外特にこれといった物が入っていない冷... 「あ、悪い」 「いやいいよ。買ってくる。何か食べたいものある?」 彼女はすぐに気を取り直し、生気がほとんどない彼に微笑み... 「じゃあ、プリッツ頼む」 「好きだよね。ポッキーからチョコ抜いたヤツ」 「それがいいんだよ」 「はーい。プリッツね。あ、そうだ着替えてからでいい?」 「どうぞどうぞ」 「じゃあ、また後でねー」 七香は勢いよく扉を開いて出て行った。 「部屋隣だし、一旦着替えてから集まってもよかったよな」 志智は重たい体を起き上がらせ、制服のボタンを外し始めた。 * 白いTシャツの上に水色のパーカー、空色の膝下までのスカ... 「志智はプリッツとして、私は何を買おうかな。ポテチ、じゃ... 独り言をぶつぶつ唱えている七香は他人から見たら怪しい人... 「この感じ……多分、アイツだ……」 二人組のうちの髪の毛がないほうがつぶやいた。 「なんか変な感じする」 七香も視線、いや本能で何かを感じ、少し早足で歩く。 「気づかれたか……」 長髪の男の姿が焦げ茶色の異質な物に変質する。 「早まるな慎重になれ!」 「いや、気づかれてしまった可能性がある以上、面倒なことに... 怪人とでも言うべき姿に変貌した男の髪が伸び新幹線のよう... 「え?」 「失敗した」 突然のことに一瞬彼女の頭はフリーズしたが、すぐに走り出... 「待て」 怪人も髪を伸ばしながら後を追う。 「ひゃぁああああああ!」 近くで遊んでいた子供たちもすぐに蜘蛛の子を散らすように... * 気力を振り絞り学校の制服から黒のTシャツの上に赤の上着... 「天井のシミ以外と少ない……というか見つからねぇな」 天井のシミを探すことに即行で飽きた彼は取扱説明書に手を... 「嫌な予感がする……」 志智は本能で何かを感じた。何かは分からなかった。ただの... * 「はぁ、はぁ、はぁ……」 あれがおじさんの手紙に書いてあった侵略者? どうして私... ? 私何かしたっけ? 例えば侵略者についての秘密を知って... 追われながら息を切らしながら走りながら彼女は頭をフル回... 人気がない広めの公園にたどり着くと、目の前には草で編ま... 「妙に勘が鋭いな。こちらがお前を察知できるようにお前もこ... 男がつぶやきながら七香に近づいてくる。彼女は振り返り逃... 「あ、あぁ……」 彼女の動向は開き呼吸も荒くなり、体が小刻みに震える。ち... 彼女の頭は逃げるために使えそうなものを探す。少し離れた... 「じゃあ少しの間眠ってもらおうか」 髪の無い男が彼女に手を伸ばし、首元を掴もうとした時――。 「なぁ、何してるんだ?」 突然の声に振り返ると、そこには志智が立っていた。 「知り合い……じゃなさそうだな」 「誰だお前?」 「ソイツの幼なじみ」 淡々と言葉を放つが、呼吸は少し荒く彼の足は僅かに震えて... 「そう邪魔するなら消えろ」 髪の長い怪人は髪を槍の投擲のように伸ばし、志智を攻撃す... 「痛っ」 「志智!」 「さてと、お前にはこちらに来てもらおうか」 髪のない男が再び七香に詰め寄る。 「どうして私を狙うの?」 震える声を絞り出す。 「お前が鍵だからだよ。私たちの世界とこちらの世界の」 「どういうこと?」 「理由は知らないが、お前がいればこの世界と私たちの世界を... 男は高笑いしながら七香の首を右手で掴み持ち上げる。 「あ、あ……」 七香も両手で剥がそうとするが、力の差がありすぎて剥がせ... 「少し寝てもらうぞ」 「待て!」 志智が立ち上がり叫ぶ。 「お前に何ができる?」 髪が無い男が見下した目で見る。銃弾をも弾く肉体に対して... 志智は懐から先ほど部屋で装着し悶絶したドライバーを取り... 「志……智……ダメ……」 「それは……!」 男の表情に少し焦りが見えた。髪の長い怪人も表情はないが... 「行くぞ……」 志智はドライバーを腰に装着し、同時に黒いペンシルを右手... 「ぐっ!」 先ほどと同様に彼の膝が地面に直撃する。突然迫る激痛に歯... 「なんだ。見かけ倒しか――」 髪の長い男は一瞬気が緩むが、すぐに緩みは消えた。黒鉛の... 「はぁ、はぁ……変身……!」 息切れしながらゆっくり立ち上がる。 「NORMAL COLOR PENCIL」 ドライバーから電子音声が流れると黒いオーラが鎧に変わり... 「お前も姿が変わるのか」 髪のない男は思わず掴んでいた七香を離してしまった。解放... 「見かけ倒しが!」 長髪の怪人は再びミサイルのような勢いで髪を伸ばし攻撃し... 「がはっ」 先ほど銃弾を受けても全く動かなかった体が数歩下がる。 そのまま左ジャブ、右ストレート、左ローキック、体勢が崩... 「調子に乗るな」 髪のない男の険しい目つきで体が異質な物へと変貌した。そ... 「くっ」 志智はガードしようとするが、格闘能力は怪人の方が上らし... 「おい! いつまで倒れてるんだ!」 鱗の怪人が倒れた仲間に呼びかける。 「おいよ!」 長髪の怪人は起き上がり、獲物を狩る蛇のように髪を伸ばし... 「何だこれ? ほどけねぇ!」 「おーらよ!」 鱗の怪人は髪によって動きを封じられた志智に大振りの一撃... 「目が回る!」 「これで終わりだ!」 遠心力をたっぷり乗った上体で地面に叩きつけられる。志智... 「志智!」 砂埃が晴れた地面には怪獣が歩いたのではないかというぐらい... 「やったか!」 長髪の怪人が勝利を確信したかのように高笑いする。 「いや、まだ変身は解けていない。まだトドメはさせていない」 鱗の怪人は右拳を握りピクリともしない志智を見据える。 ブシュー! 「なんだ?」 怪人二人の気が緩んだ瞬間、背後から白いガスが吹き付けら... 「なんだお前か」 二人がゆっくりと近づいてくるのに対し、中身の無くなった... 「ムダなあがきを」 七香は分かっていた。自身がどんな攻撃をしても怪人には全... 怪人もそのことは理解しており、彼女の行動は理解できなか... 「七香から離れろ……!」 突然の声に二人の怪人は思わず後ろを振り返り驚愕する。そ... 「志智……!」 「悪い七香、ちょっと寝てた。いい音が目覚ましになってくれ... 「ごめん分かんない」 この時は誰も気づかなかった。消化器の落ちる音が志智の目... 「死に損ないが」 二人の怪人が志智に再び向かい合い構える。 「志智! ペンシルを変えて!」 「おう」 七香の叫びに応答し、ベルトに刺さっていた黒いペンシルを... 「SKY COLOR PENCIL」 志智を纏う鎧の色が黒から空色に変わり、彼はジェット機の... 「空を飛んだぐらいでなんだっていうんだ!」 ミサイルのように髪が伸びていくが、志智の速度は髪よりも... 「な!」 一瞬にして間合いを詰め、風を纏った蹴りと拳を二人にぶつ... 「借りるぞ」 彼女が持っていた木の枝を奪い、風を纏わせ投げつけ、攻撃... 「それがどうした」 鱗の怪人はノーガードで風を纏った木の枝を受ける。風圧で... 「多少すばしっこくなったようだが、先ほどまでよりも攻撃が... 「だったらコイツだ」 志智は滑り台の上から飛び降り赤色のペンシル取り出し空色... 「RED COLOR PENCIL」 空色の鎧が赤色へと変わる。 「それがどうした!」 鱗の怪人が殴りかかるが、逆に怪人がダメージを負った。 「熱っ!」 一瞬の隙を逃さず、志智が炎を纏った拳を数発たたき込み、... 「くっそ!」 長髪の怪人の髪が志智を捕縛する。志智は髪をどうにかしよ... 「だったらこれだ」 志智はドライバーに刺さった赤いペンシルを一回転させる。... 「ぐああぁあああああああ!」 全身が燃え、怪人が絶叫しながら地面を転がり髪についた火... 「ヤべ」 志智は赤いペンシルを抜き、代わりに青いペンシルを刺し回... 「BLUE COLOR PENCIL」 赤い鎧が青色に変わり、手から消防車のホースのように水を... 「ぐああ!」 長髪の怪人に纏わり付いていた炎は鎮火されたが髪は燃えつ... 「そろそろ決めるか」 志智は青いペンシルを黒色に変える。 「NORMAL COLOR PENCIL」 再びドライバー装填した黒いペンシルを三回回すと、黒いオ... 「くっそ……」 長髪だった怪人は地面に倒れたまま一軒家を壊せそうなぐら... 「一体仕留め損ねた……」 志智は追撃しようとするが、鎧は消失し地面に倒れる。 「志智!」 地面に倒れた志智に駆け寄り呼びかける。 「七香……ケガねぇか?」 「ううん。私は大丈夫そんなことより志智が……!」 「俺は大丈夫だ。そんなことよりも……」 志智はよろよろと立ち上がるが、すぐに倒れそうになる彼に... 「いいよ。ありがとう」 「でも……」 「このドライバーは襲ってくる侵略者から身を守るために使う... 「……それもそっか……腹減った。帰ろうぜ」 志智は気が抜けたように微笑んだ。 * 「はぁ、はぁ、はぁ……」 夕焼けに街が染まっていく中、人が滅多に通らない路地にて... 「特徴は送った。後は応援が来るのを待つだけだ……」 「応援とは何のことだ?」 声の方を振り向くとそこには昼間自身を追っていた黒いコー... 「お前に教えることは何もない」 男は静かにつぶやくと、全身が鱗の怪人になった。 「そうか。ならばここで朽ち果てろ」 黒いコートの男はそれだけ言い放つと、藍色のドライバーを... 「変身」 「NORMAL COLOR PENCIL」 男の体に黒い鎧が纏わり付く。志智が纏った鎧と色は同じで... 「お前も変身するのか」 お前も? 男が少し首を傾げた隙に鱗の怪人が殴りかかるが... 「なるほど……さっきのお仲間よりは一発あたりの威力は落ちる... 「仲間……? 誰のことだ? お前と戦闘したという連絡は来て... 「とぼけるな!」 怪人は自身を纏っている鱗の一枚を剥ぎ、投げつける。投げ... 「俺の鱗は防御力を上げるだけでなく、一枚一枚がこういう風... 「なるほど。最後のあがきか。ならコイツだ」 男は黒いペンシルを抜き、銀色のペンシルを代わりに刺し回... 「SILVER COLOR PENCIL」 黒い鎧が銀色の鎧に変わる。 「お前も色が変わるのか……だがムダだ!」 怪人は自身の鱗を再び投げつける。鱗は男に命中するが、先... 「バカな……」 怪人はさらに投げ続けるが、効果はないようだ。そのまま近... 「があぁ!」 怪人は自身が受けた今までの攻撃の中で最も重い衝撃に思わ... 「トドメだ。最後に言い残すことはあるか?」 男は燃える炎を氷で閉じ込めたような声で言い放ちながらド... 「NORMAL COLOR PENCIL」 怪人はふらつきながら立ち上がる。 「俺の役目は終わった……後はお前を道連れにするだけだ」 怪人は一気に十枚の鱗を剥ぎ投げつける。同時に男も走りだ... 「うおおおおおぉおおおおお!」 怪人も最後のあがきと言わんばかりに鱗をひたすら投げるが... 「くっそおおおおおお!」 絶叫と同時に男の渾身の拳が怪人の顔面に炸裂し、爆発した。... 「ふぅ」 一息つきながら男は変身を解いた。 プルルルルル。 コートの中から鳴ってきた電話に出る。 「はい刃野(じんの)です……えぇ、とりあえず倒しました。二... ツーツーツー。 「なんで切りやがったんだ?」 男はしかめ面で電話を握りしめた。 * 志智と七香が自身が住んでいるマンションにたどり着いた時... 「で、今晩どうする?」 「私の家来る?」 「いいのかよ?」 「いいよ。何か作るね」 「ありがと……」 志智は七香に支えてもらいながら階段を上がり、部屋に入れ... 「悪いな……ベッドも貸してもらって……」 「ううん。そんなことよりもご飯作るね。うどんでいい?」 「うん。ありがとな」 七香は机ほどの大きさの台所に向かい、お鍋でお湯を沸かし... 「あ、そうだ」 「何?」 「また後でおじさんが七香に送った手紙見せてくれ」 「え、あ、うんまた後でね」 返事した七香の顔は顔はトマトのように赤かったが、志智に... 「ありがと……」 二人はまだ知らなかった。今日の戦いは序章に過ぎなかった... 終了行: [[活動/霧雨]] **鉛筆の騎士 試作品 [#v002a543] そう 夜、街灯が地上に輝く星のように闇を照らしている街の片隅... 「ここがもう一つの世界」 歪みから出てきたうちの一人がつぶやく。 「探すぞ」 もう一人が命令口調で指図しゆっくりと歩き出した。 同時刻、街の中心付近にあるビルの一室のこと。そこには十数... 「空間に歪みが発生しました! 今までの中で一番大きいです」 三十代前半ほどの男性がパソコンを見ながら叫ぶ。 「そうか……遂に来ましたか」 部屋の一番奥の机にいる男がメガネを光らせつぶやいた。彼... * 早春の土手。芽吹いた緑にようやく暖かい風がそよぐ道で高... 「何してるの?」 一人の女子が彼に話しかける。 「お、あぁ。お前か……」 彼は眠そうに答える。 「もう。またそんなとこで寝て」 少年は少し右手をずらし、少女の肩まで届く黒い髪が風にな... 「どうしたの?」 「いや、なんかさ。明日から春休みなんだなって」 「そうだね」 少女は少年の横に腰を降ろす。 「色々あったな」 「色々あったねぇ」 微笑みながら返す。 「もう一年になるのかぁって思うと早いよな」 「そうだね。え? もうこの街に来て一年なの! 早っ!」 「さっき終業式終わったばっかだろ」 「あはははは。早いねぇ」 少女はぼんやりと空を見上げる。 「ねぇ、志智(しち)、おじさん元気してるかな」 「さぁな。でも時々手紙もらってるだろ?」 「そうだけどさ、会ってみないと分からないことってあるじゃ... 「そうだな……」 志智は足を大きく振り上げ、その反動で起き上がる。 「帰るか。手紙来てるかもしれねぇし。あ、うちに来て一緒に... * 昼間にもかかわらず薄暗い路地で二人の男が話していた。男... 「で、どうやって探すんだ?」 つぶやいた男は身長はもう一人よりも頭一つ分高く、黒髪が... 「手当たり次第に探すしかないかもな」 返事をした男は二十代の男性の平均身長ほどで長身の男と違... 「手当たり次第って」 「仕方ないだろう。こちらは顔も名前も知らない。あるのは近... 「それもそうか……」 長身の男は頭をかきむしりながらしぶしぶ納得する。 「こんな路地裏で怪しい服装の男が二人何してるんだ?」 頭上からの声に二人は視線を上げると、二階の建物の屋上か... 「何者だ?」 髪のない男が地面に着地した黒いコートの男に訊ねる。 「それはこちらの台詞だ。侵略者」 男はコートから取り出した黒い銃を構え氷よりも冷たい、否... 「これは面倒だな」 長髪の男が体の前に出す。と同時に黒いコートの男が発砲す... 「それがお前の本当の姿か」 長髪の男の姿は身長や体型は変わっていないが、先ほどまで... 「ならばこちらも姿を変えさせてもらおう」 黒いコートの男は懐から藍色の文庫本サイズの角が丸い長方... 「逃げるぞ」 姿を変えていなかったもう一人が提案すると、長髪の怪人は... 「くっ!」 黒いコートの男は思わず手で顔面をガードする。砂埃が晴れ... 「くそ……逃がしたか……」 * [#r43cd5c8] 「これだ」 高校から徒歩十五分ほどある住宅街にある一つのマンション... 「中身見ていい?」 「あぁ」 少女も目を輝かせながら封筒を開け、中の手紙に目を通す。 「そういや、七香(なのか)に届いた手紙も後で見ていいか?」 「え、あ、う、うん」 七香と呼ばれた少女は志智から視線を逸らし、頬を赤らめる。 「どうした?」 「また今度ね」 「おう」 ピンポーン! インターホンの音が鳴り響く。 「誰だ?」 志智は首をかしげながら、玄関へ向かいドアを開ける。 「はい」 ドアを開けた先には緑の服を着た二十代半ばの男性が机の引... 「宅急便です」 「あ、ありがとうございます」 配達員から荷物を受け取り部屋に戻る。 「何が届いたの? おじさんからの手紙、じゃなさそうだね」 「差出人はおじさんなんだけどな。でも手紙だけだったら封筒... 志智も七香も固い表情で首を傾げる。 「まぁとりあえず開けてみるか」 机からカッターを取り出し、届いた段ボールの箱を開封する。 「なんだこれ?」 段ボールの中には一番上に手紙が入っていそうな封筒と取扱... 「何かのケース?」 七香は取り出したのは文庫本サイズの角が丸い長方形の赤紫... 「何だろこの穴?」 物体の側面には一つだけ鉛筆が入りそうな穴がある。 「鉛筆削りかな?」 「鉛筆とかもう使わないだろ」 「そうだよねぇ……ねぇ、今志智が持ってるのって……」 「だよなぁ」 しかめ面をしている志智が今手に持っている黒い長方形のケ... 「手に持った感触だと鉛筆が一ダースって感じ」 「手紙読んでみるね」 七香がダンボールに入っていた封筒を開封する。 「……これから侵略者が君たちを襲ってくるから、これを使って... 「俺にも見せて」 志智も七香が読んでいた手紙にのぞき込むようにして目を通... 「異世界からの侵略者が襲ってくる?」 二人は首を傾げる。二人は孤児院でお世話になったおじさん... 「まぁ、いいか」 「いいの?」 「よくはないけど、分からないし」 七香は志智に手紙を手渡し、先ほど取り出した取扱説明書と... 「何だそれ?」 「取扱説明書らしいよ。これを読んだら何か分かるかも」 「なるほどな。読み終わったら貸してくれ」 「分かったー」 七香が説明書を読んでいる間に志智は箱の中にまだ残ってい... 「これは俗に言う変身ベルトで『ドライバー』っていう名前み... 説明書を読みながら七香が話しかける。 「変身ベルトって日曜の朝にやってる番組みたいだな」 「そうだね」 「使い方はベルトを装着して、丸い穴にこの鉛筆状の物を入れ... 「さっき七香が言ってた鉛筆削りっていうのは意外と近かった... 「あはは。確かに」 二人は先ほどまでと違い、談笑していた。 「装着する鉛筆によって能力が変わるみたい」 「黒が三箱、赤、青、空色が一箱ずつ入ってるな」 「黒だけやたら多いね」 「なんでだろうな。とりあえず説明書貸してくれ」 「いいよ」 七香は取扱説明書と書かれた冊子を志智に手渡す。冊子をパ... 「あ、うん。なんかよく分からないけど、とりあえず使ってみ... 「え、使うの?」 「正直怪しいし怖いけど、説明書読んだだけじゃよく分からな... 「うん。分かった」 七香は先ほど不思議そうに眺めていた物体をおそるおそる志... 「えっと、確か腰に装着するんだよな。向きはと……」 説明書を眺めながら、手渡されたドライバーを腰につけると... 「巻き付いた!」 「え、何これ凄い!」 志智が戸惑う中、七香は目を輝かせながら彼が装着したドラ... 「で、えっと、穴に棒、鉛筆を差し込むんだな」 「そうみたいだね」 志智はケースから黒い鉛筆状のアイテムを一本取り出し、お... 「で、回すと」 ゆっくりと一回転させた時、志智の体に異変が起きた。 「ぐっ!」 突然、体に電流が流れたように膝が地面に衝突する。 「志智!」 「あぁああああああああああ!」 志智は喉元をかきむしりながら地面でのたうち回る。 「志智! 志智!」 七香は目を見開きながら駆け寄り、彼の体を揺さぶる。 「そうだ! 説明書!」 志智がさっきまで手に取っていた説明書を勢いよく掴み、震... 「何これ?」 七香は自身の血の気が引くのを感じた。 「このドライバーは失敗作。今まで死刑囚七人を実験体として... 七香の瞳に涙がこみ上げてくる。説明書を投げ捨て、志智の... 「志智! お願い! 死なないで! お願い! ねぇ!」 握った手を額に当て、涙が頬を流れる。 「はぁ……はぁ……七香……」 志智は小刻みに震える左手で腰に巻き付いたドライバーを外... 「しぃちぃ……!」 上体を起こした志智に飛びついた。 「よかった! 死ななくて……生きててくれて、本当に……」 「……おう」 自身の胸で泣きじゃくる彼女の背中をそっと撫でた。 三十分ほど経ち落ち着いた七香から解放された志智はベッド... 「鉛筆少し削れてるね」 七香が眺めている鉛筆は先端が鉛筆削りで削ったかのように... 「なるほど。だから鉛筆だけ大量にあったのか」 「消耗品だもんね」 「説明書はちゃんと読まないとダメだな」 「ごめんね。私もそこまでちゃんと読んでなくて」 「俺もちゃんと読んでなかったしな……次使うときにはちゃんと... 「え! また使うの?」 七香は目を見開く。 「おじさんがわざわざ送ってきてくれたってことは俺たちにな... 「そ、それは一理あるけど……だったら私が――」 「いや、俺が使う」 志智が七香の言葉を遮り言葉を続ける。 「七香が使える可能性はあるけど、俺の方に送られたってこと... 「うぅ……」 七香が不服そうにうなる様子に志智は頭を掻いて小さく息を... 「じゃあ、俺が起き上がるまでに説明書をもう一回読んでくれ... 「分かった! 任せて!」 七香は目を輝かせどこから取り出したか分からない伊達メガ... 「……鉛筆状のアイテムの名前は『ペンシル』……変身するとペン... ぐぅううう。 「あ……」 ブツブツ独り言をつぶやきながら説明書を読んでいた七香が... 「そういや、三時過ぎか……なんかおやつ食うか?」 「食べる!」 目を輝かせて冷蔵庫の扉を開くが――。 「何もない……」 七香は水と食パン以外特にこれといった物が入っていない冷... 「あ、悪い」 「いやいいよ。買ってくる。何か食べたいものある?」 彼女はすぐに気を取り直し、生気がほとんどない彼に微笑み... 「じゃあ、プリッツ頼む」 「好きだよね。ポッキーからチョコ抜いたヤツ」 「それがいいんだよ」 「はーい。プリッツね。あ、そうだ着替えてからでいい?」 「どうぞどうぞ」 「じゃあ、また後でねー」 七香は勢いよく扉を開いて出て行った。 「部屋隣だし、一旦着替えてから集まってもよかったよな」 志智は重たい体を起き上がらせ、制服のボタンを外し始めた。 * 白いTシャツの上に水色のパーカー、空色の膝下までのスカ... 「志智はプリッツとして、私は何を買おうかな。ポテチ、じゃ... 独り言をぶつぶつ唱えている七香は他人から見たら怪しい人... 「この感じ……多分、アイツだ……」 二人組のうちの髪の毛がないほうがつぶやいた。 「なんか変な感じする」 七香も視線、いや本能で何かを感じ、少し早足で歩く。 「気づかれたか……」 長髪の男の姿が焦げ茶色の異質な物に変質する。 「早まるな慎重になれ!」 「いや、気づかれてしまった可能性がある以上、面倒なことに... 怪人とでも言うべき姿に変貌した男の髪が伸び新幹線のよう... 「え?」 「失敗した」 突然のことに一瞬彼女の頭はフリーズしたが、すぐに走り出... 「待て」 怪人も髪を伸ばしながら後を追う。 「ひゃぁああああああ!」 近くで遊んでいた子供たちもすぐに蜘蛛の子を散らすように... * 気力を振り絞り学校の制服から黒のTシャツの上に赤の上着... 「天井のシミ以外と少ない……というか見つからねぇな」 天井のシミを探すことに即行で飽きた彼は取扱説明書に手を... 「嫌な予感がする……」 志智は本能で何かを感じた。何かは分からなかった。ただの... * 「はぁ、はぁ、はぁ……」 あれがおじさんの手紙に書いてあった侵略者? どうして私... ? 私何かしたっけ? 例えば侵略者についての秘密を知って... 追われながら息を切らしながら走りながら彼女は頭をフル回... 人気がない広めの公園にたどり着くと、目の前には草で編ま... 「妙に勘が鋭いな。こちらがお前を察知できるようにお前もこ... 男がつぶやきながら七香に近づいてくる。彼女は振り返り逃... 「あ、あぁ……」 彼女の動向は開き呼吸も荒くなり、体が小刻みに震える。ち... 彼女の頭は逃げるために使えそうなものを探す。少し離れた... 「じゃあ少しの間眠ってもらおうか」 髪の無い男が彼女に手を伸ばし、首元を掴もうとした時――。 「なぁ、何してるんだ?」 突然の声に振り返ると、そこには志智が立っていた。 「知り合い……じゃなさそうだな」 「誰だお前?」 「ソイツの幼なじみ」 淡々と言葉を放つが、呼吸は少し荒く彼の足は僅かに震えて... 「そう邪魔するなら消えろ」 髪の長い怪人は髪を槍の投擲のように伸ばし、志智を攻撃す... 「痛っ」 「志智!」 「さてと、お前にはこちらに来てもらおうか」 髪のない男が再び七香に詰め寄る。 「どうして私を狙うの?」 震える声を絞り出す。 「お前が鍵だからだよ。私たちの世界とこちらの世界の」 「どういうこと?」 「理由は知らないが、お前がいればこの世界と私たちの世界を... 男は高笑いしながら七香の首を右手で掴み持ち上げる。 「あ、あ……」 七香も両手で剥がそうとするが、力の差がありすぎて剥がせ... 「少し寝てもらうぞ」 「待て!」 志智が立ち上がり叫ぶ。 「お前に何ができる?」 髪が無い男が見下した目で見る。銃弾をも弾く肉体に対して... 志智は懐から先ほど部屋で装着し悶絶したドライバーを取り... 「志……智……ダメ……」 「それは……!」 男の表情に少し焦りが見えた。髪の長い怪人も表情はないが... 「行くぞ……」 志智はドライバーを腰に装着し、同時に黒いペンシルを右手... 「ぐっ!」 先ほどと同様に彼の膝が地面に直撃する。突然迫る激痛に歯... 「なんだ。見かけ倒しか――」 髪の長い男は一瞬気が緩むが、すぐに緩みは消えた。黒鉛の... 「はぁ、はぁ……変身……!」 息切れしながらゆっくり立ち上がる。 「NORMAL COLOR PENCIL」 ドライバーから電子音声が流れると黒いオーラが鎧に変わり... 「お前も姿が変わるのか」 髪のない男は思わず掴んでいた七香を離してしまった。解放... 「見かけ倒しが!」 長髪の怪人は再びミサイルのような勢いで髪を伸ばし攻撃し... 「がはっ」 先ほど銃弾を受けても全く動かなかった体が数歩下がる。 そのまま左ジャブ、右ストレート、左ローキック、体勢が崩... 「調子に乗るな」 髪のない男の険しい目つきで体が異質な物へと変貌した。そ... 「くっ」 志智はガードしようとするが、格闘能力は怪人の方が上らし... 「おい! いつまで倒れてるんだ!」 鱗の怪人が倒れた仲間に呼びかける。 「おいよ!」 長髪の怪人は起き上がり、獲物を狩る蛇のように髪を伸ばし... 「何だこれ? ほどけねぇ!」 「おーらよ!」 鱗の怪人は髪によって動きを封じられた志智に大振りの一撃... 「目が回る!」 「これで終わりだ!」 遠心力をたっぷり乗った上体で地面に叩きつけられる。志智... 「志智!」 砂埃が晴れた地面には怪獣が歩いたのではないかというぐらい... 「やったか!」 長髪の怪人が勝利を確信したかのように高笑いする。 「いや、まだ変身は解けていない。まだトドメはさせていない」 鱗の怪人は右拳を握りピクリともしない志智を見据える。 ブシュー! 「なんだ?」 怪人二人の気が緩んだ瞬間、背後から白いガスが吹き付けら... 「なんだお前か」 二人がゆっくりと近づいてくるのに対し、中身の無くなった... 「ムダなあがきを」 七香は分かっていた。自身がどんな攻撃をしても怪人には全... 怪人もそのことは理解しており、彼女の行動は理解できなか... 「七香から離れろ……!」 突然の声に二人の怪人は思わず後ろを振り返り驚愕する。そ... 「志智……!」 「悪い七香、ちょっと寝てた。いい音が目覚ましになってくれ... 「ごめん分かんない」 この時は誰も気づかなかった。消化器の落ちる音が志智の目... 「死に損ないが」 二人の怪人が志智に再び向かい合い構える。 「志智! ペンシルを変えて!」 「おう」 七香の叫びに応答し、ベルトに刺さっていた黒いペンシルを... 「SKY COLOR PENCIL」 志智を纏う鎧の色が黒から空色に変わり、彼はジェット機の... 「空を飛んだぐらいでなんだっていうんだ!」 ミサイルのように髪が伸びていくが、志智の速度は髪よりも... 「な!」 一瞬にして間合いを詰め、風を纏った蹴りと拳を二人にぶつ... 「借りるぞ」 彼女が持っていた木の枝を奪い、風を纏わせ投げつけ、攻撃... 「それがどうした」 鱗の怪人はノーガードで風を纏った木の枝を受ける。風圧で... 「多少すばしっこくなったようだが、先ほどまでよりも攻撃が... 「だったらコイツだ」 志智は滑り台の上から飛び降り赤色のペンシル取り出し空色... 「RED COLOR PENCIL」 空色の鎧が赤色へと変わる。 「それがどうした!」 鱗の怪人が殴りかかるが、逆に怪人がダメージを負った。 「熱っ!」 一瞬の隙を逃さず、志智が炎を纏った拳を数発たたき込み、... 「くっそ!」 長髪の怪人の髪が志智を捕縛する。志智は髪をどうにかしよ... 「だったらこれだ」 志智はドライバーに刺さった赤いペンシルを一回転させる。... 「ぐああぁあああああああ!」 全身が燃え、怪人が絶叫しながら地面を転がり髪についた火... 「ヤべ」 志智は赤いペンシルを抜き、代わりに青いペンシルを刺し回... 「BLUE COLOR PENCIL」 赤い鎧が青色に変わり、手から消防車のホースのように水を... 「ぐああ!」 長髪の怪人に纏わり付いていた炎は鎮火されたが髪は燃えつ... 「そろそろ決めるか」 志智は青いペンシルを黒色に変える。 「NORMAL COLOR PENCIL」 再びドライバー装填した黒いペンシルを三回回すと、黒いオ... 「くっそ……」 長髪だった怪人は地面に倒れたまま一軒家を壊せそうなぐら... 「一体仕留め損ねた……」 志智は追撃しようとするが、鎧は消失し地面に倒れる。 「志智!」 地面に倒れた志智に駆け寄り呼びかける。 「七香……ケガねぇか?」 「ううん。私は大丈夫そんなことより志智が……!」 「俺は大丈夫だ。そんなことよりも……」 志智はよろよろと立ち上がるが、すぐに倒れそうになる彼に... 「いいよ。ありがとう」 「でも……」 「このドライバーは襲ってくる侵略者から身を守るために使う... 「……それもそっか……腹減った。帰ろうぜ」 志智は気が抜けたように微笑んだ。 * 「はぁ、はぁ、はぁ……」 夕焼けに街が染まっていく中、人が滅多に通らない路地にて... 「特徴は送った。後は応援が来るのを待つだけだ……」 「応援とは何のことだ?」 声の方を振り向くとそこには昼間自身を追っていた黒いコー... 「お前に教えることは何もない」 男は静かにつぶやくと、全身が鱗の怪人になった。 「そうか。ならばここで朽ち果てろ」 黒いコートの男はそれだけ言い放つと、藍色のドライバーを... 「変身」 「NORMAL COLOR PENCIL」 男の体に黒い鎧が纏わり付く。志智が纏った鎧と色は同じで... 「お前も変身するのか」 お前も? 男が少し首を傾げた隙に鱗の怪人が殴りかかるが... 「なるほど……さっきのお仲間よりは一発あたりの威力は落ちる... 「仲間……? 誰のことだ? お前と戦闘したという連絡は来て... 「とぼけるな!」 怪人は自身を纏っている鱗の一枚を剥ぎ、投げつける。投げ... 「俺の鱗は防御力を上げるだけでなく、一枚一枚がこういう風... 「なるほど。最後のあがきか。ならコイツだ」 男は黒いペンシルを抜き、銀色のペンシルを代わりに刺し回... 「SILVER COLOR PENCIL」 黒い鎧が銀色の鎧に変わる。 「お前も色が変わるのか……だがムダだ!」 怪人は自身の鱗を再び投げつける。鱗は男に命中するが、先... 「バカな……」 怪人はさらに投げ続けるが、効果はないようだ。そのまま近... 「があぁ!」 怪人は自身が受けた今までの攻撃の中で最も重い衝撃に思わ... 「トドメだ。最後に言い残すことはあるか?」 男は燃える炎を氷で閉じ込めたような声で言い放ちながらド... 「NORMAL COLOR PENCIL」 怪人はふらつきながら立ち上がる。 「俺の役目は終わった……後はお前を道連れにするだけだ」 怪人は一気に十枚の鱗を剥ぎ投げつける。同時に男も走りだ... 「うおおおおおぉおおおおお!」 怪人も最後のあがきと言わんばかりに鱗をひたすら投げるが... 「くっそおおおおおお!」 絶叫と同時に男の渾身の拳が怪人の顔面に炸裂し、爆発した。... 「ふぅ」 一息つきながら男は変身を解いた。 プルルルルル。 コートの中から鳴ってきた電話に出る。 「はい刃野(じんの)です……えぇ、とりあえず倒しました。二... ツーツーツー。 「なんで切りやがったんだ?」 男はしかめ面で電話を握りしめた。 * 志智と七香が自身が住んでいるマンションにたどり着いた時... 「で、今晩どうする?」 「私の家来る?」 「いいのかよ?」 「いいよ。何か作るね」 「ありがと……」 志智は七香に支えてもらいながら階段を上がり、部屋に入れ... 「悪いな……ベッドも貸してもらって……」 「ううん。そんなことよりもご飯作るね。うどんでいい?」 「うん。ありがとな」 七香は机ほどの大きさの台所に向かい、お鍋でお湯を沸かし... 「あ、そうだ」 「何?」 「また後でおじさんが七香に送った手紙見せてくれ」 「え、あ、うんまた後でね」 返事した七香の顔は顔はトマトのように赤かったが、志智に... 「ありがと……」 二人はまだ知らなかった。今日の戦いは序章に過ぎなかった... ページ名: