開始行: [[活動/霧雨]] **嫌い [#k668fd42] はるか 旧友たちと懐かしい話に興じていると、何やら向こうの席が... 嫉妬は満開の笑顔である。清々しいくらいの笑顔だ。彼のも... 「嫉妬のやつ相変わらずだな」 「あいつは昔から人気者だ」 「気配りもできる」 「ただ皆の機嫌をとってるだけじゃないか。八方美人っていう... しばらくすると嫉妬は席を立ち、周囲を物色し始める。別の... 「あいつ、仕事何やってんだ?」 「大手の商社マンだってさ」 「いいねー猫かぶりが上手いやつはいいとこにいくんだ」 「お前、知らないのか? あいつはちゃんと大学出てるよ」 「昔から頭良かったからな」 「その上、体育ではいつもヒーローだ」 なんだ、こいつらも嫉妬のファンか。嫉妬はまた少し離れた... 「なんだ、お前嫉妬のこと嫌いだったっけ?」 「別に、大して話したこともないよ」 「いつも成績を競ってたじゃないか」 「それはこいつが勝手に張り合ってただけだよ」 「そんなことないぞ、嫉妬もお前の成績を気にしてた」 「ほんとかよ」 「ああ、俺のところにこっそり聞きに来てたよ。仲いいから知... そんなことしなくったって一番賢いのはあいつじゃないか。 「それで、どっちが勝ってたんだよ」 「おいおいやめてくれよ」 「そりゃ嫉妬の方が成績はよかったさ」 さっきまでそこにいた嫉妬の姿が見えない。どこまで席を離... 「いやでも、そういや違うな」 「何が?」 「最初はお前が勝ってたよ、そういえば」 「そうだ、そういえばお前、一番になったってしばらく自慢し... 「嫉妬はお前に勝つために俺のとこに来てたんだ、お前の成績... 知ってるさ。あいつは努力してた。俺もあいつが目標だった... どこに行っていたのかと思ったら、隣のテーブルを盛り上げて... 「ちょっとタバコ」 店を出てタバコに火をつける。冬の三日月に吹いたマルボロ... 「お前も吸うのか」 憎しみは禁煙席についての不満をぶつくさ言って俺に同意を... 「急に席を立ってどうしたんだよ、嫉妬のやつお前と話したが... 「いいんだ、俺は話したくなかった」 「ああ、わかるさ、複雑だよな」 何でお前がそれを言えるんだ。 「俺もあるよ因縁の一つや二つ」 そうだ、お前は俺に謝らなきゃいけないことがあるはずだ。... 「しかし今日はお前と会えてよかったよ。あれ以来だからな、... どうしてまだ俺の事を友達だと思ってる。 「またあの頃に戻りたいねえ、散々馬鹿な遊びで日を無駄にし... 最後の最後にお前があんなことするから、全て無駄になった... 「さすがに冷えるな、そろそろ中に戻ろう」 憎しみは何気ない顔でそう言った。ずるいよな、最初っから... 「おい、どうした。さっきから黙りこくって。そろそろ皆待っ... 俺だってずっと待ってたんだ。 「そうだな、行くよ」 タバコの火を消した。最初から吸いたくなんてなかったくせ... 「あの時はすまなかった」 温かい店内に入ると急に尿意を催し、宴会場に戻る前にトイ... 「あ……」 「よう……」 本当にどいつもこいつも変わらないな。 「久しぶり……隣のテーブルにいたんだよ、僕、話そうかと思っ... 「話すことなんてないよ」 うつむいて目をきょろきょろさせる軽蔑に俺は昔と同じ苛立... 「……ごめん」 これだ、この謝り方。すぐに謝りやがるんだよ。何でもっと... 用を足し終えた軽蔑は手を洗いながらまたぼそぼそと話し始... 「実は、今日が皆と会える最後かもしれないと思って」 「また来年にでも集まればいい」 お前には興味はないが、嫉妬や憎しみとはちゃんと話してみ... 「僕は、来年にはもうここにはいないんだ」 「ここにはって、引っ越すのか? 俺だって今日は東京からわ... 「僕、宇宙飛行士になったんだよ」 「え……」 「来年のいまごろは向こうにいるんだ、宇宙に行けばもしもの... 「お前が、宇宙に? 凄いじゃねえか」 「ありがとう、じゃあ先に戻ってるね」 「おう、頑張れよ、宇宙……」 まさかあいつが宇宙飛行士とは。俺は自らの高慢ゆえに一人... なんだか今日はひどく疲れた。いろんなことが頭を巡ってま... 終了行: [[活動/霧雨]] **嫌い [#k668fd42] はるか 旧友たちと懐かしい話に興じていると、何やら向こうの席が... 嫉妬は満開の笑顔である。清々しいくらいの笑顔だ。彼のも... 「嫉妬のやつ相変わらずだな」 「あいつは昔から人気者だ」 「気配りもできる」 「ただ皆の機嫌をとってるだけじゃないか。八方美人っていう... しばらくすると嫉妬は席を立ち、周囲を物色し始める。別の... 「あいつ、仕事何やってんだ?」 「大手の商社マンだってさ」 「いいねー猫かぶりが上手いやつはいいとこにいくんだ」 「お前、知らないのか? あいつはちゃんと大学出てるよ」 「昔から頭良かったからな」 「その上、体育ではいつもヒーローだ」 なんだ、こいつらも嫉妬のファンか。嫉妬はまた少し離れた... 「なんだ、お前嫉妬のこと嫌いだったっけ?」 「別に、大して話したこともないよ」 「いつも成績を競ってたじゃないか」 「それはこいつが勝手に張り合ってただけだよ」 「そんなことないぞ、嫉妬もお前の成績を気にしてた」 「ほんとかよ」 「ああ、俺のところにこっそり聞きに来てたよ。仲いいから知... そんなことしなくったって一番賢いのはあいつじゃないか。 「それで、どっちが勝ってたんだよ」 「おいおいやめてくれよ」 「そりゃ嫉妬の方が成績はよかったさ」 さっきまでそこにいた嫉妬の姿が見えない。どこまで席を離... 「いやでも、そういや違うな」 「何が?」 「最初はお前が勝ってたよ、そういえば」 「そうだ、そういえばお前、一番になったってしばらく自慢し... 「嫉妬はお前に勝つために俺のとこに来てたんだ、お前の成績... 知ってるさ。あいつは努力してた。俺もあいつが目標だった... どこに行っていたのかと思ったら、隣のテーブルを盛り上げて... 「ちょっとタバコ」 店を出てタバコに火をつける。冬の三日月に吹いたマルボロ... 「お前も吸うのか」 憎しみは禁煙席についての不満をぶつくさ言って俺に同意を... 「急に席を立ってどうしたんだよ、嫉妬のやつお前と話したが... 「いいんだ、俺は話したくなかった」 「ああ、わかるさ、複雑だよな」 何でお前がそれを言えるんだ。 「俺もあるよ因縁の一つや二つ」 そうだ、お前は俺に謝らなきゃいけないことがあるはずだ。... 「しかし今日はお前と会えてよかったよ。あれ以来だからな、... どうしてまだ俺の事を友達だと思ってる。 「またあの頃に戻りたいねえ、散々馬鹿な遊びで日を無駄にし... 最後の最後にお前があんなことするから、全て無駄になった... 「さすがに冷えるな、そろそろ中に戻ろう」 憎しみは何気ない顔でそう言った。ずるいよな、最初っから... 「おい、どうした。さっきから黙りこくって。そろそろ皆待っ... 俺だってずっと待ってたんだ。 「そうだな、行くよ」 タバコの火を消した。最初から吸いたくなんてなかったくせ... 「あの時はすまなかった」 温かい店内に入ると急に尿意を催し、宴会場に戻る前にトイ... 「あ……」 「よう……」 本当にどいつもこいつも変わらないな。 「久しぶり……隣のテーブルにいたんだよ、僕、話そうかと思っ... 「話すことなんてないよ」 うつむいて目をきょろきょろさせる軽蔑に俺は昔と同じ苛立... 「……ごめん」 これだ、この謝り方。すぐに謝りやがるんだよ。何でもっと... 用を足し終えた軽蔑は手を洗いながらまたぼそぼそと話し始... 「実は、今日が皆と会える最後かもしれないと思って」 「また来年にでも集まればいい」 お前には興味はないが、嫉妬や憎しみとはちゃんと話してみ... 「僕は、来年にはもうここにはいないんだ」 「ここにはって、引っ越すのか? 俺だって今日は東京からわ... 「僕、宇宙飛行士になったんだよ」 「え……」 「来年のいまごろは向こうにいるんだ、宇宙に行けばもしもの... 「お前が、宇宙に? 凄いじゃねえか」 「ありがとう、じゃあ先に戻ってるね」 「おう、頑張れよ、宇宙……」 まさかあいつが宇宙飛行士とは。俺は自らの高慢ゆえに一人... なんだか今日はひどく疲れた。いろんなことが頭を巡ってま... ページ名: