開始行: [[活動/霧雨]] **最高存在の祭典 [#j84b7117] あてどなく死ぬ。 目的はない。生活に困っているわけでも過重なストレスを抱... 強いて言うなら、生きる意味が分からない。 人はやがて死ぬ。生きている間に何を為そうが、死ぬ。なら... 死にたいというよりは、死ぬべきだ。 かるがゆえに僕は死ぬべきなのだろう。 とある言葉を思い出す。 「希死念慮、だったかな」 「きしねんりょ?」 仕切りの向こう側で、言葉の意味を測るように一文字ずつは... 「病気とか人間関係とか、どうにもならないから死ぬんじゃな... 「死にたいんですか?」 「……まあ、有り体に言えば」 語りに語って、畢竟するにそういうことだった。 日曜日。あるいは主日。 近所の教会で開かれていた集会になんとなく参加していた。... 電話ボックスを二つ繋げたような木造のそれは程々に朽ちて... 雰囲気を味わえただけでも来た甲斐があったかもしれないと... 「…………」 壁の向こうにひっそりとした息遣いがある。 固唾を飲む。見えないというだけで尊く、冒しがたく、緊張... 信徒ではない。無宗教で、あまつさえ無神論者。 だけど―― 「罪を、告白なさい」 そう言われてしまっては答える他なかった。 とはいえ取り立てて濯ぐほどの罪なんて持ち合わせていない... ……いや、ひとつある。 「生きていて、いいのかなって」 「いいんじゃないですか?」 一蹴された。そりゃまあ、そうか。大概の人は生きているこ... 「死にたいんですか?」 問われて、言葉に詰まる。そんな単純なことじゃない。もっ... 僕は語り出した。僕が死ぬべきわけを。 「死にたいんですか?」 「……まあ、有り体に言えば」 何ともいえない敗北感を味わう羽目になった。 話し終える頃には緊張もすっかり解けていて、雰囲気も懺悔... 「死んじゃうんですね」 「いや、すぐにどうこうって話じゃないんだけど、なんという... 「危険思想……?」 その通りだった。生きるのが合理的じゃないから死ぬなんて... 「ふぅん」 仕切りの向こうは存外に頭が弱いらしく、相づちもわかって... ただこうして黙ったかと思えば一息に、 「全ての人は、罪を犯したので、神からの栄誉を受けることが... とか言うものだから、想像に飽くことはない。 「ぇへ、わたしの好きな言葉」 聖書からの引用だろうか。照れるような物言いがしおらしい。 言葉の意味と発言の意図を汲み取ろうと一考するも、期せず... 「あなたも、生きていてもいいんですよ。私が認めます。ここ... 「それは……なんというか」 僕が言うのもなんだが、教会で話すには不信心が過ぎる。し... 「神々しいことで」 どちらからともなく笑声をこぼす。クスクスと、誰かから隠... このまま大往生できたらさぞ幸せだろう。 さて正体について。 結局、若い女性ということくらいしかわからないまま段落が... よくよく考えればあるいはわかったのかもしれない。礼拝に... まあ、しかし。 「え――」 白い頭巾に黒い面紗。僕の臍くらいの高さにある明眸が朗ら... 「またね、おにーさん」 いやはや、修道服の子供とは思わなんだ。 終了行: [[活動/霧雨]] **最高存在の祭典 [#j84b7117] あてどなく死ぬ。 目的はない。生活に困っているわけでも過重なストレスを抱... 強いて言うなら、生きる意味が分からない。 人はやがて死ぬ。生きている間に何を為そうが、死ぬ。なら... 死にたいというよりは、死ぬべきだ。 かるがゆえに僕は死ぬべきなのだろう。 とある言葉を思い出す。 「希死念慮、だったかな」 「きしねんりょ?」 仕切りの向こう側で、言葉の意味を測るように一文字ずつは... 「病気とか人間関係とか、どうにもならないから死ぬんじゃな... 「死にたいんですか?」 「……まあ、有り体に言えば」 語りに語って、畢竟するにそういうことだった。 日曜日。あるいは主日。 近所の教会で開かれていた集会になんとなく参加していた。... 電話ボックスを二つ繋げたような木造のそれは程々に朽ちて... 雰囲気を味わえただけでも来た甲斐があったかもしれないと... 「…………」 壁の向こうにひっそりとした息遣いがある。 固唾を飲む。見えないというだけで尊く、冒しがたく、緊張... 信徒ではない。無宗教で、あまつさえ無神論者。 だけど―― 「罪を、告白なさい」 そう言われてしまっては答える他なかった。 とはいえ取り立てて濯ぐほどの罪なんて持ち合わせていない... ……いや、ひとつある。 「生きていて、いいのかなって」 「いいんじゃないですか?」 一蹴された。そりゃまあ、そうか。大概の人は生きているこ... 「死にたいんですか?」 問われて、言葉に詰まる。そんな単純なことじゃない。もっ... 僕は語り出した。僕が死ぬべきわけを。 「死にたいんですか?」 「……まあ、有り体に言えば」 何ともいえない敗北感を味わう羽目になった。 話し終える頃には緊張もすっかり解けていて、雰囲気も懺悔... 「死んじゃうんですね」 「いや、すぐにどうこうって話じゃないんだけど、なんという... 「危険思想……?」 その通りだった。生きるのが合理的じゃないから死ぬなんて... 「ふぅん」 仕切りの向こうは存外に頭が弱いらしく、相づちもわかって... ただこうして黙ったかと思えば一息に、 「全ての人は、罪を犯したので、神からの栄誉を受けることが... とか言うものだから、想像に飽くことはない。 「ぇへ、わたしの好きな言葉」 聖書からの引用だろうか。照れるような物言いがしおらしい。 言葉の意味と発言の意図を汲み取ろうと一考するも、期せず... 「あなたも、生きていてもいいんですよ。私が認めます。ここ... 「それは……なんというか」 僕が言うのもなんだが、教会で話すには不信心が過ぎる。し... 「神々しいことで」 どちらからともなく笑声をこぼす。クスクスと、誰かから隠... このまま大往生できたらさぞ幸せだろう。 さて正体について。 結局、若い女性ということくらいしかわからないまま段落が... よくよく考えればあるいはわかったのかもしれない。礼拝に... まあ、しかし。 「え――」 白い頭巾に黒い面紗。僕の臍くらいの高さにある明眸が朗ら... 「またね、おにーさん」 いやはや、修道服の子供とは思わなんだ。 ページ名: