開始行: &size(20){'''人類滅亡サークル'''}; CENTER:''[[角>部員紹介]]'' ~ これは人類の危機を救った、二人の男と一人の女の、熱き戦... 某日某所、某サークルの部室の戸口で、二回生、ヨシオは立... 「どうした?」 後ろから声をかけてきたのは、通称『隊長』と呼ばれる男だ... 「隊長、部室の中に見慣れないものが・・・・」 「なに」 隊長は部屋を覗き込み、はっと息を呑んだ。 「あれは、いったい何でありましょうか」 「分からん。だが、ついに我々の活動を開始する時が来たよう... 「ええ。そのようです」 ヨシオが目をキラキラさせながら頷いた。 「なぁに。戸口で立ち止まって何してるのよ」 やってきたのは期待の新入生、アカギさんだ。 「ああ、アカギさんか。部屋の中を見てみろ。我々に挑戦状が... 「挑戦状?」 アカギが部屋を覗くと、畳敷きの真ん中に、どう見ても紙を... 「何よ、ただのゴミじゃない」 部屋に入ってそれに手を伸ばしかけた彼女を、二人はあわて... 「待て待て待て待て。早まるな」 「そうですよアカギさん。我々の部の名前を忘れたんですか?」 「部の名前って・・・・『人類を滅亡から救おうサークル』でしょ... アカギの答えに、隊長は満足そうに頷いた。 「その通りだ。だからあれは挑戦状だとなぜ分からん? 我々... 「ふぅん」 まったく興味なさそうにアカギは相槌をうった。 「それで隊長、我々はどうすればいいのでしょうか」 ヨシオの問いに、隊長は大仰に頷いた。 「うむ、そうだな。まずは敵を知らねばならん。あらゆる可能... ~ 『仮説一』 ~ 「よし、分かった」 「どうしたのでありますか?」 「あの一見ゴミのように見えるあれは、我々の眼を欺くための... 「おお、恐ろしいですね」 「たいした想像力よね」 「何か言ったかね、アカギさん」 「いえ何も・・・・」 「我々を直接狙ってくるとは、なかなか好戦的な連中だ。ふ。... 「そうですね。ですが、我々はあの正体に気づき、悪行を未然... 「自分の身を守っただけじゃない?」 「何か言ったかね、アカギさん」 「いえ別に・・・・」 「とにかく、正義の前に悪は栄えたためしはないということだ... ふうとため息をつくと、アカギは隊長に向き直った。 「で、そうだとして、あれをどうするのよ。あんな物騒なもの... 「あ・・・・」 「それはまずいですね」 隊長は涙を飲んだ。 「すまん二人とも。人類のためだ。部室はあきらめて――」 その時だった。爽やかな春風が三人の周りを吹き抜けていっ... 『ああ!』 二人の声が重なる。しかし、それだけだった。閃光も爆風も... 「はい、お遊びはおしまい。さっさと部室に入るわよ」 アカギは再びゴミを片付けようと手を伸ばす。しかし、それ... 「待ちたまえ。まだ状況は少しも好転していない」 真摯な瞳に射抜かれ、アカギは思わず頷いていた。 ~ 『仮説二』 ~ 「地雷ではないことは証明された。だが、より恐ろしい可能性... 「そ、それは何でありますか」 ヨシオはごくりとつばを飲み込んだ。 「それは、毒ガスだ」 『毒ガス?』 一人は純粋な驚きで。もう一人は『なに突拍子もないこと言... 「ああ、その通り。いいか、これは可燃物に見える。だから我... 「なるほど。人類を守ろうとする我らを、逆に人類を滅亡させ... 「まったくだ」 隊長は腕を組んでうんうんと頷く。 そんな様子をじっと見ていたが、はあと息を吐いて、アカギ... 「じゃあ、不燃物に捨てればいいんじゃない?」 「あ・・・・」 「じゃあそういうことで」 アカギの手がゴミに触れる寸前、今度はヨシオがその手を掴... 「待ってくれアカギさん。敵の正体がつかめない以上、その行... ~ 『閑話』 ~ 「じゃあどうしろっていうのよ。これじゃあいつまで経っても... 「む。何やら聞いてはならないことを聞いてしまったような気... 「そのとおりであります」 「そこで、我々も攻撃のときだ。いいか、あれがどんな罠を秘... 「そうか。それなら我々に責任はないですね。知らなかったん... 「・・・・ずいぶん後ろ向きな解決方法ね」 アカギの声を完全に無視して、二人はしゃべり続ける。 「そう、たとえあれに触れて毒ガスが出ようと巨大怪獣が出現... 「ええ。その時は真っ先に我々が死んでしまうでしょうが、知... 「死んじゃったら、全然だめじゃない。第一、ちっとも人類救... 『あ・・・・』 「馬鹿?」 固まった二人を、アカギは冷たく一瞥した。 「まあいいわ。とにかく、あれはないものとして考えればいい... 今度こそ入ろうとしたアカギを、今度は二人が同時に引きと... 「待て、我々を殺す気か!」 「どうしてそうなるのよ!」 「さっきそういう結論に達したろうが」 隊長の怒声に頷くヨシオ。 「それに、私は今度こそ最悪の可能性を指摘せねばならないの... ~ 『仮説三』 ~ 「あれは、核爆弾のスイッチなのだ」 「核爆弾!」 なぜかヨシオが熱いまなざしを隊長に向けた。 「何で核爆弾のスイッチがあんな粗末なものになるのよ?」 「ふむ。さっきも言っただろう。あれは擬態だと。そして、我... なるほど。とヨシオは頷いた。 「確かにこの世界は、あと数発の核爆弾が爆発すれば滅亡する... 「あんた、必死になってその状況を回避しようとしている人た... 相変わらずアカギの言うことを無視し、二人はしゃべり続け... 「思えば、人類の幕引きは、人類の手によるほうがふさわしい... 「あんたは武士に謝りなさい」 もうどうでもいいとばかりにアカギは首を振った。 「核といえば、最近多くの国が持ち始めたが、このスイッチは... 「そうですね。少し前ならアメ○カかロシ○でしょうが、今は世... 「そうだな。だが、こうは思わないかね。一番恐ろしいものは... 「そ、それはどういう―――」 「あー、もう、いいかげんにしなさい!」 とうとうアカギは堪忍袋の緒が切れた。二人の隙をつくとつ... 「はい、これで核爆弾のスイッチ説も巨大怪獣説も宇宙人は実... ~ 『終劇』 ~ 「な、なんてことを・・・・」 隊長とヨシオはへなへなと腰を下ろした。 「まったく、ゴミ一つでこれだけ騒げるのも一つの才能よね」 アカギは紙くずを拾い上げると、それを広げた。 「なになに? 美少年サークル? めくるめく美少年の世界へ... 彼女はしばらく考えた後、再びそれを丸めてゴミ箱へ投下し... 「待ちたまえ!」 その時、隊長が大声を上げた。 「え?」 驚いて振り向くアカギに、隊長は厳かな声で語りかけた。 「それは、人類滅亡の第一歩なのだよ」 ――またですか? そういう顔をしたアカギに向かって、隊長は首を振った。 「ゴミ問題こそが、今の日本が抱える最悪の人類滅亡シナリオ... アカギはしばらく目をぱちくりさせていたが、やがてにやり... 「へえ、今までで一番いいことを言いましたね。分かりました... 「うむ。そうしたまえ」 「では、本日をもって私はここをやめます」 『え?』 「いままでありがとうございました。と一応言っておきます。... 「あの、どこへ行かれるんですか?」 「あ、うん。このチラシにあった『美少年サークル』に入部す... あっけに取られる二人を残し、アカギは部室を出ていった。 『なんじゃそりゃあ!』 二人の叫びが夕焼けを切り裂いた。 ~ CENTER:''(了)'' ~ ~ CENTER:三題噺 14第回 -- ゴミ -- サークル -- 忘却 -- ~ [[戻る>活動/三題噺]] 終了行: &size(20){'''人類滅亡サークル'''}; CENTER:''[[角>部員紹介]]'' ~ これは人類の危機を救った、二人の男と一人の女の、熱き戦... 某日某所、某サークルの部室の戸口で、二回生、ヨシオは立... 「どうした?」 後ろから声をかけてきたのは、通称『隊長』と呼ばれる男だ... 「隊長、部室の中に見慣れないものが・・・・」 「なに」 隊長は部屋を覗き込み、はっと息を呑んだ。 「あれは、いったい何でありましょうか」 「分からん。だが、ついに我々の活動を開始する時が来たよう... 「ええ。そのようです」 ヨシオが目をキラキラさせながら頷いた。 「なぁに。戸口で立ち止まって何してるのよ」 やってきたのは期待の新入生、アカギさんだ。 「ああ、アカギさんか。部屋の中を見てみろ。我々に挑戦状が... 「挑戦状?」 アカギが部屋を覗くと、畳敷きの真ん中に、どう見ても紙を... 「何よ、ただのゴミじゃない」 部屋に入ってそれに手を伸ばしかけた彼女を、二人はあわて... 「待て待て待て待て。早まるな」 「そうですよアカギさん。我々の部の名前を忘れたんですか?」 「部の名前って・・・・『人類を滅亡から救おうサークル』でしょ... アカギの答えに、隊長は満足そうに頷いた。 「その通りだ。だからあれは挑戦状だとなぜ分からん? 我々... 「ふぅん」 まったく興味なさそうにアカギは相槌をうった。 「それで隊長、我々はどうすればいいのでしょうか」 ヨシオの問いに、隊長は大仰に頷いた。 「うむ、そうだな。まずは敵を知らねばならん。あらゆる可能... ~ 『仮説一』 ~ 「よし、分かった」 「どうしたのでありますか?」 「あの一見ゴミのように見えるあれは、我々の眼を欺くための... 「おお、恐ろしいですね」 「たいした想像力よね」 「何か言ったかね、アカギさん」 「いえ何も・・・・」 「我々を直接狙ってくるとは、なかなか好戦的な連中だ。ふ。... 「そうですね。ですが、我々はあの正体に気づき、悪行を未然... 「自分の身を守っただけじゃない?」 「何か言ったかね、アカギさん」 「いえ別に・・・・」 「とにかく、正義の前に悪は栄えたためしはないということだ... ふうとため息をつくと、アカギは隊長に向き直った。 「で、そうだとして、あれをどうするのよ。あんな物騒なもの... 「あ・・・・」 「それはまずいですね」 隊長は涙を飲んだ。 「すまん二人とも。人類のためだ。部室はあきらめて――」 その時だった。爽やかな春風が三人の周りを吹き抜けていっ... 『ああ!』 二人の声が重なる。しかし、それだけだった。閃光も爆風も... 「はい、お遊びはおしまい。さっさと部室に入るわよ」 アカギは再びゴミを片付けようと手を伸ばす。しかし、それ... 「待ちたまえ。まだ状況は少しも好転していない」 真摯な瞳に射抜かれ、アカギは思わず頷いていた。 ~ 『仮説二』 ~ 「地雷ではないことは証明された。だが、より恐ろしい可能性... 「そ、それは何でありますか」 ヨシオはごくりとつばを飲み込んだ。 「それは、毒ガスだ」 『毒ガス?』 一人は純粋な驚きで。もう一人は『なに突拍子もないこと言... 「ああ、その通り。いいか、これは可燃物に見える。だから我... 「なるほど。人類を守ろうとする我らを、逆に人類を滅亡させ... 「まったくだ」 隊長は腕を組んでうんうんと頷く。 そんな様子をじっと見ていたが、はあと息を吐いて、アカギ... 「じゃあ、不燃物に捨てればいいんじゃない?」 「あ・・・・」 「じゃあそういうことで」 アカギの手がゴミに触れる寸前、今度はヨシオがその手を掴... 「待ってくれアカギさん。敵の正体がつかめない以上、その行... ~ 『閑話』 ~ 「じゃあどうしろっていうのよ。これじゃあいつまで経っても... 「む。何やら聞いてはならないことを聞いてしまったような気... 「そのとおりであります」 「そこで、我々も攻撃のときだ。いいか、あれがどんな罠を秘... 「そうか。それなら我々に責任はないですね。知らなかったん... 「・・・・ずいぶん後ろ向きな解決方法ね」 アカギの声を完全に無視して、二人はしゃべり続ける。 「そう、たとえあれに触れて毒ガスが出ようと巨大怪獣が出現... 「ええ。その時は真っ先に我々が死んでしまうでしょうが、知... 「死んじゃったら、全然だめじゃない。第一、ちっとも人類救... 『あ・・・・』 「馬鹿?」 固まった二人を、アカギは冷たく一瞥した。 「まあいいわ。とにかく、あれはないものとして考えればいい... 今度こそ入ろうとしたアカギを、今度は二人が同時に引きと... 「待て、我々を殺す気か!」 「どうしてそうなるのよ!」 「さっきそういう結論に達したろうが」 隊長の怒声に頷くヨシオ。 「それに、私は今度こそ最悪の可能性を指摘せねばならないの... ~ 『仮説三』 ~ 「あれは、核爆弾のスイッチなのだ」 「核爆弾!」 なぜかヨシオが熱いまなざしを隊長に向けた。 「何で核爆弾のスイッチがあんな粗末なものになるのよ?」 「ふむ。さっきも言っただろう。あれは擬態だと。そして、我... なるほど。とヨシオは頷いた。 「確かにこの世界は、あと数発の核爆弾が爆発すれば滅亡する... 「あんた、必死になってその状況を回避しようとしている人た... 相変わらずアカギの言うことを無視し、二人はしゃべり続け... 「思えば、人類の幕引きは、人類の手によるほうがふさわしい... 「あんたは武士に謝りなさい」 もうどうでもいいとばかりにアカギは首を振った。 「核といえば、最近多くの国が持ち始めたが、このスイッチは... 「そうですね。少し前ならアメ○カかロシ○でしょうが、今は世... 「そうだな。だが、こうは思わないかね。一番恐ろしいものは... 「そ、それはどういう―――」 「あー、もう、いいかげんにしなさい!」 とうとうアカギは堪忍袋の緒が切れた。二人の隙をつくとつ... 「はい、これで核爆弾のスイッチ説も巨大怪獣説も宇宙人は実... ~ 『終劇』 ~ 「な、なんてことを・・・・」 隊長とヨシオはへなへなと腰を下ろした。 「まったく、ゴミ一つでこれだけ騒げるのも一つの才能よね」 アカギは紙くずを拾い上げると、それを広げた。 「なになに? 美少年サークル? めくるめく美少年の世界へ... 彼女はしばらく考えた後、再びそれを丸めてゴミ箱へ投下し... 「待ちたまえ!」 その時、隊長が大声を上げた。 「え?」 驚いて振り向くアカギに、隊長は厳かな声で語りかけた。 「それは、人類滅亡の第一歩なのだよ」 ――またですか? そういう顔をしたアカギに向かって、隊長は首を振った。 「ゴミ問題こそが、今の日本が抱える最悪の人類滅亡シナリオ... アカギはしばらく目をぱちくりさせていたが、やがてにやり... 「へえ、今までで一番いいことを言いましたね。分かりました... 「うむ。そうしたまえ」 「では、本日をもって私はここをやめます」 『え?』 「いままでありがとうございました。と一応言っておきます。... 「あの、どこへ行かれるんですか?」 「あ、うん。このチラシにあった『美少年サークル』に入部す... あっけに取られる二人を残し、アカギは部室を出ていった。 『なんじゃそりゃあ!』 二人の叫びが夕焼けを切り裂いた。 ~ CENTER:''(了)'' ~ ~ CENTER:三題噺 14第回 -- ゴミ -- サークル -- 忘却 -- ~ [[戻る>活動/三題噺]] ページ名: