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京都工芸繊維大学 文藝部

Top / 活動 / 三題噺 / 金曜日
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 &size(20){'''金曜日'''};
 CENTER:''[[土星から来た猫>部員紹介#s5eb8818]]'' 
 #navi(活動/三題噺)
 *金曜日 ―― [[土星から来た猫>部員紹介]] [#odc8a824]
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 我が家の金曜日はカレーの日だ。
 なぜかと言えば私が唯一作れる料理であり、私はカレーにはこだわりを持っており、金曜日はラクロス部の練習が無いからなのだけど。
 
 「ただいま~。」
 
 私は家に帰るといつも言う言葉だ。しかし金曜日だけは誰もそれに答えることはない。母さんはパートで弟は友達とあそんでいるし、父さんと兄さんはそもそもこの時間帯に家にいることはまずない。
 
 私は自分の部屋に荷物を置くと真っ先にキッチンへと向かう。これも何時ものことだ。
 具の下準備は母があらかじめしているので私はカレーを仕上げるだけでいい。どうやら今日はシーフードのようだ。
 鍋に水と具をいれ火をかける。その間に肝心要のルーを準備する。
 私は市販のカレールーなど使わない。そんなのじゃあこだわりを持っているとはいえないと思う。まず棚に並んでいる十数種類のカレー粉とスパイスからいくつか選び出す。
 「え~と、今日はエビと貝つかうからっと…。」
 厳選したカレー粉をフライパンで炒めている小麦粉とミックスする。カレーの香りがより強くなってキッチンに充満する。
 「しまった、換気扇つけてない…。」
 
 頃合いを見て鍋にルーを投入。とろ火から弱火にし、じっくり煮込む。今の内にお米も洗っておこう。夕飯の時間にセットしてと。
 
 「ふぅ…。」
 
 一通りの手順を終え、後はカレーが焦げ付かないようにたまにかき混ぜるだけだ。手持ち無沙汰なのでテレビをつけてみる。ちょうど昔の特撮戦隊ものの再放送をしていた。気まずい。いつもカレーを語っている私はクラスメイト(特に男子)から「キレンジャー」と女の子にとって(男の子もそうだろうが)不名誉なあだ名で呼ばれることがある。ああ、実に不名誉だ。確かにカレーは好きだが。昔はこの正義の味方のヒロインに憧れていたこともあるが別にこの手の番組が好きな訳じゃないしキレンジャーのこともあるので私は他のチャンネルに変えた。
 
 『また来週をお楽しみに!』
 
 「しまった!夢中になって30分まるまる見てしまった!わ、私のカレーが!」
 急いでキッチンの鍋を見ると、
 「姉ちゃんただいま~。ちょうどそこで兄ちゃんとばたっりだよ~。」
 「お、今日はカレーだな。久しぶりに早く帰ってきてよかった。うちのカレーはうまいからな。」
 時計をみてはっとする。もうこんな時間だ。よく考えたら制服のままだし…。いや、それよりもカレーだ。兄弟や制服のことよりもカレーを優先しなければならない。
 
 私は私のカレーを好きでいてくれる愛すべき兄弟達を無視し、それ以上に愛しているカレーをかき混ぜ続けた。
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 CENTER:''(了)''
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 CENTER:三題噺 第2回
  -- カレー -- 時計 -- 正義 -- 
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