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京都工芸繊維大学 文藝部

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 &size(20){'''絵の外の貴婦人'''};
 CENTER:''[[土星から来た猫>#s5eb8818]]''
 #navi(活動/三題噺)
 *絵の外の貴婦人 ―― [[土星から来た猫>部員紹介]] [#mff54a94]
 ~
 
 僕の学校の美術室には貴婦人の肖像画があります。しかもふつうじゃありません。夜な夜などころか真っ昼間から絵から抜け出てくるオバケなんです。
 
 「部長さんアフターヌーンティーの用意をしてくださりませんこと?」「ぬるいですわよ。何回入れてもおいしくならないのですわね。」「ふう。今日はもう疲れましたわ。スイートルーム絵の中にかえります。」
 
 と、まあとっても素敵なヒトです。いやオバケです。一体全体なぜ彼女は絵の外を歩き回っているのでしょう?顧問の先生に聞いても「知らないな。別にそんなこといいじゃないか。男子校にオバケとはいえ女人が居るのは華やかだからな。」と、聞く耳なんか持っていません。しかも美術部の代々の部長は彼女の世話役をしなければならないといういつから出来たか分からない伝統があります。こうして部長である僕は今日も彼女に振り回されるのです。
 
 「部長さん。何かお茶請けはありませんか。こうどうも口寂しいと言いますか、その…少しおなかがすきまして…。」
 「えーと、ん。こんなもので良ければどうぞ。」
 今朝、偶然妹からもらった数種のチ口ルチョコ渡してみた。まあきっと「こんなものが食べれますか!」といって投げ返して来ると思う。
 「・・・・・。」
 「・・・・・。」
 「これはどうやって食べれば良いのでしょうか?」
 ずさ…。この反応は予想出来なかった…。僕は銀紙を取って自分の口にほおりこんだ。彼女もそれをマネをする。
 「(もぐもぐ…ゴクン)」
 「えーと…、口に合いましたでしょうか?」
 彼女はその質問に答えず二つ目のチ口ルチョコをほおばった。三つ目…、四つ目…、五つ目…。自分が持ってきたチョコは瞬く間に無くなってしまった。
 『キーンコーンカーンコーン。校内に残っている生徒は速やかに下校してください。繰り返します…』
 「あー、下校時刻なんで僕はここら辺でおいとましますね。それじ…。」
 「部長さん。」
 ぎくり。帰ろうとした僕は呼び止められ「明日もこのトリュフチョコレート。持ってきてくださる?」
 と、有無を言わせぬ眼孔でにらまれたら持ってこないわけにはいかない。もちろん僕は「はい。よろこんで。」と言うしかないわけだ。このおかげで毎日チ口ルチョコを買って登校しなければならなくなったのだが…。
 
 今日もいつものように彼女とティータイムを(半ばむりやり)楽しんでいると、
 「おーい、こないだの美術コンクール。おまえ入賞してたぞ。ほれ、授賞式の案内。」
 こんな感じで顧問の先生に朗報を伝えられた。もっと気の利かした渡し方はないのかよと心の中でつっこんでしまう。
 「それは確かもぐもぐ、先月書いていたもぐもぐ、私の絵でしょうかゴクン?」
 もうお気に入りになってしまったチ口ルチョコを食べながら質問された。というかもぐもぐしながらしゃべるのはとても貴婦人らしくないと思ったが口には出さずに
 「モデルが良かったからですよ。」
 すると彼女は無言のまま僕に近づいてきて…、って近い。顔をどんどん近づけてくる!?いったい何が彼女の堪にさわったのだろうか?わ、分からない。分からないぞ。そのまま彼女は
 
 「Chu. Well-done.」
 
 キスをした。チョコの味が猛烈だった。それからしばらく僕は放心していた。彼女は変わらずチョコと紅茶を楽しんでいた。
 
 下校時刻になり我に返ると彼女が僕の顔と授賞式の案内状を見比べていた。
 「あの、何か…?」
 おそるおそる聞いた僕はその答えにあっけを取られた。
 「部長さんの名前を初めて知りましたわ。」
 
 いまでも彼女の本心が見えない。
 ~
 
 CENTER:''(了)''
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 CENTER:三題噺 第3回
  -- 貴婦人 -- ウェルダン -- チ○ルチョコ -- 
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